本稿の概要 |
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・住宅省エネ2025キャンペーンは、住宅の省エネ化を促進するために設けられた4つの補助事業の総称 ・補助事業を活用すると、躯体や開口部の断熱リフォーム、または高効率給湯器の設置などで、補助金を受けられる ・補助金を受けるには、さまざまな要件を満たす必要があるため、事前確認やリフォーム会社との連携が大切 |
「リフォームするなら、今がチャンスかも?」── そう思わせてくれるのが、国土交通省・経済産業省・環境省が連携して推進する大型補助制度「住宅省エネ2025キャンペーン」です。
《窓の断熱改修》や《省エネ給湯器の導入》などに対し補助が受けられる4つの制度が始まっています。ただし、制度ごとに要件や補助金額が異なるため「よくわからない」と感じる方も多いはず。
本稿ではキャンペーンの全体像や申請時の注意点、そして4つの補助事業のポイントなどをわかりやすく解説します。リフォームをご検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
住宅省エネ2025キャンペーンとは?
さっそく「住宅省エネ2025キャンペーン」の概要からご紹介します。
このキャンペーンは非常に大規模であるため、まずはキャンペーンの全体像をつかみ、要を把握することをおすすめします。
その後、ご自宅のリフォームに使えそうな各補助金制度の詳細を確認していただくと、より理解しやすくなります。
キャンペーンの概要
「住宅省エネ2025キャンペーン」は、家庭部門の省エネ化を促進するために設けられた、新築とリフォームを対象とした4つの補助事業の総称です。
本稿では、主にリフォームについて扱います。
▼趣旨
本キャンペーンは「2050年カーボンニュートラル実現」に向け、住宅の省エネ化を強く推進することを目的としています。よって、補助対象は省エネ関連のリフォームです。
カーボンニュートラルとは、温室効果ガス(主に二酸化炭素)の人為的な排出量と森林による吸収量を均衡させ、プラスマイナスゼロにすることを目指す概念です。
地球温暖化やそれにともなう異常気象を抑制するには、温室効果ガスの排出量削減が不可欠です。
しかし、日本の電力は大半が化石燃料由来です。電力消費を抑えないと、化石燃料を燃やし続ける(二酸化炭素を排出し続ける)ことになります。
建築物分野の消費エネルギーは、全体の約3割を占めます。ですから、住宅の生涯における省エネ化が、脱炭素にとって非常に重要です。
▼キャンペーンを構成する4つの事業
キャンペーンには、以下の4つの事業が含まれています。これらは、住宅の省エネ性能を高める改修工事を広く対象としています。
事業名 | 対象 | 所管 |
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子育てグリーン住宅支援事業 | 開口部の改修、給湯器の設置、その他の改修 | 国土交通省 |
先進的窓リノベ2025事業 | 開口部(窓や玄関ドアなど)の断熱改修 | 環境省 |
給湯省エネ2025事業 | 省エネ性の高い高効率給湯器への交換 | 経済産業省 |
賃貸集合給湯省エネ2025事業 | 賃貸集合住宅を対象とした小型省エネ給湯器への交換 | 経済産業省 |
本キャンペーンは、2023年から始まった大型補助金制度の後継にあたります。「前回、間に合わなかったのでリフォームを諦めた」という方にはうれしい制度です。
2025年度の補助金にも予算がありますので、確実に受けるためには、早めに準備することが推奨されます。
利用する際の注意点
本キャンペーンを活用して補助金を受けるにあたって、とくに注意すべき点や制限事項をまとめます。
▼他の補助金制度との併用について
同じ工事対象に対して、今回の支援事業は、他の補助金と組み合わせることができるケースがあります。
また、リフォーム会社によっては申請に手数料がかかるなどの理由から、積極的に複数の補助金を組み合わせることをおすすめしていない場合もあります。
補助金を最大限に活用するには、どういう工事内容でどこのリフォーム会社に依頼するのがよいか、私たちコンシェルジュがアドバイスいたします。
ご興味がある方は、ぜひお問い合わせください。
▼製品の要件について
補助対象となる製品には、満たすべき要件があります。たとえば窓リノベ事業では、補助対象の製品は事前に「一定の断熱性能を満たすこと」が確認されたものに限られます。
給湯器も、定められた省エネ性能基準をクリアした機種への交換工事のみ補助対象になります。性能要件を満たさない製品を設置した場合、補助金は給付されません。
補助対象製品は、キャンペーンの公式サイトで検索できます。しっかりチェックしながら、計画を進めていただくとよいでしょう。
▼工事の要件について
工事にも満たすべき要件があります。たとえば、窓リノベ事業ではドア交換のみの工事は申請不可です。窓の断熱改修と合わせて実施する場合に限り、ドアも補助対象になります。
また、1申請あたりの合計補助額が5万円未満の工事は対象外です。一定のまとまった省エネ改修であることが求められる点に留意してください。
製品や工事の要件はリフォーム会社が教えてくれますので、一緒に相談しながら進めていただくとよいでしょう。各事業の公式ページにも詳しく書かれていますので、ご一読をおすすめします。
▼施主支給・DIY工事は補助対象外
施主(工事発注者)が機器を自分で購入して工事のみリフォーム会社に依頼する形(いわゆる施主支給、材工分離)は、補助対象になりません。同様に、施主によるDIY工事も対象外です。
補助を受けるには、各事業に登録されているリフォーム会社が製品の調達から設置まで実施する工事である必要があります。
申請方法と申請期間
本キャンペーンの補助金申請は、工事を請け負う事業者(リフォーム会社等)が代理申請する形でおこなわれます。交付された補助金は、所定の方法で施主に還元されます。
施主は、自ら煩雑な申請手続きをおこなう必要はありません。事業者から必要書類の提供を求められた際に協力する程度です。
ただし、代理申請ができるのは、各事業において事前に登録を受けた事業者だけです。施主は、登録事業者の中から工事の依頼先を選ぶ必要があります。
▼申請方法
具体的な申請フローは、以下のとおりです。
- 各事業の登録事業者にリフォーム工事を依頼する
- 登録事業者が施主の代理で交付申請をおこなう
- 工事完了後に必要書類を揃えて事務局に完了報告をおこなう
- 事務局での審査を経て事業者に補助金が交付される
- 補助金が事業者から施主に還元される
登録事業者は、交付された補助金をあらかじめ補助対象者と合意した方法により還元します。
具体的には、「工事代金に充当する方法」または「現金で支払う方法」のどちらかの方法で還元されます。
▼期日・期間
本キャンペーンの補助金事業を利用する場合は、以下の期日や期間を守る必要があります。
- 契約日:着工日以前
- 着工日:2024年11月22日以降
- 申請期間:申請受付開始日から2025年12月31日まで
なお、各補助金事業には予算があります。そのため、申請期限内であっても予算上限に達すると終了となります。
予算の消化率は、公式サイトで公表されています。このような補助金事業の予算消化は、後半になると一気に進む場合がありますのでご注意ください。
利用を検討されている方は、ときどきチェックしながら、なるべく早めに申請することをおすすめします。
子育てグリーン住宅支援事業とは
つづいて、各事業のポイントを解説します。
まずは「子育てグリーン住宅支援事業」からご紹介します。
事業の概要
「子育てグリーン住宅支援事業」は、2050年のカーボンニュートラル実現を目指し、省エネ性能の高い住宅の普及を促進することを目的としています。
本事業は令和5年度・6年度に実施された「子育てエコホーム支援事業」の後継事業です。
リフォームに関しては世帯属性の要件(子育て世帯、または若い世帯)が撤廃され、すべての世帯が対象となりました。
補助上限
詳しくは後述しますが、本補助事業を利用するには、3つある必須工事のうち2つ以上を実施する必要があります。
補助上限額は、3つすべて実施した場合と、2つだけ実施した場合で異なります。
- 必須工事3つすべてを実施:上限60万円/戸
- 必須工事のうち2つを実施:上限40万円/戸
また、先述のとおり、合計補助額が5万円未満の場合は補助対象になりません。
対象者・対象住宅・対象工事
本事業の対象となるのは、あらかじめ本事業に登録をした事業者と工事請負契約等を締結し、リフォーム工事をする方です。
また、以下の条件に合致する人に限られます。
- 住宅を所有し、居住する個人またはその家族
- 住宅を所有し、賃貸用に使う個人または法人
- 賃借人
- 共同住宅等の管理組合・管理組合法人
- 買取再販事業者(工事を他社に発注する場合)
対象住宅は、人の居住用の家屋です。また、工事請負契約日時点において建築日から1年以上経過した住宅、または過去に人が居住した住宅に限られます。
対象工事は、既存住宅に省エネ改修や子育て対応改修等をおこなうリフォーム工事です。ただし、以下の必須工事のうち2つ以上を実施する必要があります。
- 開口部の断熱改修
- 躯体の断熱改修
- エコ住宅設備の設置
2つ以上の必須工事をおこなったうえで実施する場合のみ、以下も補助対象になります。
- 子育て対応改修
- 防災性向上改修
- バリアフリー改修
- 空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置
- リフォーム瑕疵保険等への加入
一方、以下の工事は対象外です。
- 店舗併用住宅等の住宅以外の部分の工事
- 施主支給や材工分離による工事
- ドアの一部や欄間に取り付けられたガラスの交換
- 外気に面しない間仕切壁の窓やガラス、ドアの交換
- 太陽光発電設備の設置工事
- エネファームの設置工事
- リース設備の設置工事
- 中古品を用いた工事
- 補助額の合計が5万円以下の工事
先進的窓リノベ2025事業とは
つづいて、先進的窓リノベ2025事業のポイントをご紹介します。
事業の概要
「先進的窓リノベ2025事業」は、既存住宅の開口部(窓や玄関ドアなど)の断熱改修に特化した補助事業です。環境省が所管し、家庭部門のCO2削減と快適性向上を目的として実施されています。
じつは、従来の日本の住宅では、屋内と屋外とのあいだで生じる熱の流出入の大半が「窓」で生じています。よって、家の省エネ化には、窓の断熱が欠かせません。
窓の断熱性能が上がると、お部屋の保温能力が高くなり、冷暖房に使うエネルギーや光熱費が減ります。つまり、低コストで《夏は涼しく、冬は暖かい》温度に保ちやすくなります。
補助上限
本補助事業の補助額は、製品のサイズと断熱性能、および設置する住宅の種類(戸建住宅・低層集合住宅・中高層集合住宅)によって変わります。
上限額は「一戸あたり200万円」までで、先述のとおり1申請あたりの合計補助額が5万円未満の工事は対象外となります。
対象住宅・対象工事
本補助事業の対象住宅は、戸建・共同住宅によらず、人の居住の用に供する家屋です。
一方、以下に該当する建物や居室の窓は、原則対象外になります。
- 不動産登記や固定資産税で、住宅以外の用途に分類される
- 現に住宅以外の用途に使用している(店舗や施設など)
対象工事は、既存住宅におこなう開口部(窓や玄関ドアなど)の断熱性能を向上する工事です。具体的には、以下の4つの工事で補助を受けられます。
ガラス交換 | 既存サッシをそのまま利用して、既存の窓ガラスを複層ガラス等に交換する工事 |
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内窓新設 | 既存窓に内窓を新設する、または既存の内窓を取り除き新たな内窓に交換する工事 |
外窓交換 | 既存のガラス窓を、断熱性の高い複層ガラス窓等に交換する工事(はつり工法またはカバー工法) |
ドア交換 | 既存の玄関ドア等を、断熱性の高い玄関ドア等に交換する工事(はつり工法またはカバー工法) |
外窓交換およびドア交換は、はつり工法またはカバー工法、どちらでも申請できます。
はつり工法は、既存の窓枠やドア枠を撤去して、新たに枠や窓・ドアを設置する方法です。カバー工法は、既存の枠の上から新たな枠を覆い被せて取り付け、窓やドアを設置する方法です。
給湯省エネ2025事業とは
つづいて、給湯省エネ2025事業のポイントをご紹介します。
事業の概要
「給湯省エネ2025事業」は、高効率給湯器の導入支援をおこない、その普及拡大に寄与することを目的とする事業です。
家庭のエネルギー消費の内訳を見ると、給湯器が全体の4分の1程度を占めています。よって「高効率給湯器の導入」は、家庭のエネルギー消費の削減につながりやすいと言えます。
本補助事業では、高い省エネ性能と二酸化炭素排出削減効果を持つ「エコキュート、ハイブリッド給湯器、エネファーム」への交換工事が補助対象になっています。
参考:給湯省エネ2025事業
補助上限
本補助事業では、導入する高効率給湯器(性能要件を満たしたものに限る)に応じた定額が補助されます。
- エコキュート:6万円/台
- ハイブリッド給湯器:8万円/台
- エネファーム:16万円/台
補助上限は、以下のとおりです。
- 戸建住宅:いずれか2台まで
- 共同住宅等:いずれか1台まで
また、基本補助の給湯器について、一定の要件を満たす場合はその性能に応じて「4~7万円」が加算されます。
なお、基本補助の給湯器の設置に合わせて、以下の撤去工事をおこなう場合、その工事に応じた定額が加算されます。
- 電気蓄熱暖房機の撤去:8万円/台(2台まで)
- 電気温水器の撤去:4万円/台(補助を受ける台数まで)
上述の「電気温水器の撤去」にエコキュートは含まれませんので、ご注意ください。
対象住宅・対象工事
本補助事業は、戸建住宅・集合住宅いずれも対象です。持ち家のリフォームはもちろん、既存住宅を購入する際に給湯器を交換する場合も補助対象になります。
対象工事は、高効率給湯器の設置工事です (リースの利用を含む)。一方、いわゆる施主支給や材工分離による工事は対象外です。
なお、本事業の利用者は、J-クレジット制度に参加する意思表明をおこなう必要があります。
J-クレジット制度とは、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用による二酸化炭素等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を「クレジット」として国が認証する制度です。
創出されたクレジットは、カーボン・オフセットや、カーボンニュートラルの進捗管理などに活用されています。
賃貸集合給湯省エネ2025事業とは
最後に、賃貸集合給湯省エネ2025事業のポイントをご紹介します。
事業の概要
「賃貸集合給湯省エネ2025事業」は、賃貸集合住宅に対する小型の省エネ型給湯器の導入支援をおこなうことにより、その普及拡大を図ることを目的とした事業です。
小型の省エネ型給湯器とは、排熱を再利用することで従来の製品より省エネ性能を高めた給湯器のことを指します。具体的には、以下の給湯器です。
- エコジョーズ(ガス給湯器)
- エコフィール(石油給湯器)
補助上限
補助上限は「1住戸1台まで」です。定額で、以下の基本補助額が給付されます。
- 追いだき機能なし:5万円/台
- 追いだき機能あり:7万円/台
また、設置と合わせて以下の工事をおこなった場合は、補助が加算されます。
- 追いだき機能なし:共用廊下を横断するドレン排水ガイド敷設工事
- 追いだき機能あり:浴室へのドレン水排水工事(三方弁工事、三本管工事)
上述の工事の加算給付額は、定額で「3万円/台」です。
対象者・対象住宅・対象工事
本事業の補助対象者は「賃貸集合住宅のオーナーまたは管理委託を受けている者」と「給湯器交換工事の発注者」の両方を満たす方です。
区分所有マンションの場合は、棟内に賃貸住戸を2戸以上所有するオーナーであれば申請可能です。
対象住宅は、以下の両方の条件に合う既存の賃貸集合住宅に限定されています。
- 1棟に賃貸住戸が2戸以上ある建物
- 建築から1年以上経過している、または過去に誰かが居住した実績がある建物
一方、以下の物件は原則対象外です。
- 登記で「集合住宅」であることが確認できない場合
- 新築直後の建物や、賃貸用途で使われていない建物
- 貸借契約を締結しない、オーナーや親族等が居住する住戸
対象工事は、対象となる既存賃貸集合住宅の住戸の従来型給湯器を、補助対象である小型の省エネ型給湯器に交換する工事です (リースの利用を含む)。
まとめ:リフォームに住宅省エネ2025キャンペーンの補助金を活用しよう
以上、住宅省エネ2025キャンペーンに含まれる各リフォーム補助制度について、概要やポイントを網羅的に解説しました。
もしもリフォームをご検討中でしたら、制度を上手に活用し、断熱性・省エネ性の高い快適な住まいづくりに役立ててみてはいかがでしょうか?金銭的なご負担を軽くできます。
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