本稿の概要 |
---|
・マンションと一戸建ては優劣を付けにくいため、ライフスタイルに合うほうを選ぶことが大切 ・マンションは立地や利便性、セキュリティといった条件を 重視したい人に向いている ・一戸建ては住環境や生活の快適性、子育てのしやすさを重視したい人に向いている |
「マンションと一戸建て、どっちを選べば後悔しない?」⸺ この難問を前にして先に進めなくなる方が少なくありません。人生における大きな決断ですから、迷って当然です。
暮らしやすさ、老後の安心、そして資産価値……検討項目が多くて悩みますよね。しかし、それぞれの長所と短所を把握できれば、おのずとあなたに合った選択肢が見えてきます。
本稿では、マンションと一戸建てのメリットとデメリットを徹底的にご紹介します。あなたのライフスタイルに合った《後悔しない選択》を見つけるためのヒントになれば幸いです。
マンションの特徴
さっそく、マンションと一戸建ての特徴を《メリット・デメリット》の観点から解説します。
ただし、住宅の特徴 は物件個々の事情に大きく左右されますので、本稿でご紹介する特徴は「目安」あるいは「そういう傾向がある」とご解釈ください。
まずは、マンションの特徴からご紹介します。
マンションのメリット
マンションの主なメリットは、以下のとおりです。
- 立地の優れた物件が多い
- 資産価値が下がりにくい傾向がある
- 段差が少ない(バリアフリー設計)
- セキュリティが充実している傾向がある
- メンテナンスの手間が少ない
順番に、詳しく解説していきます。
▼立地の優れた物件が多い
一般的に高層の マンションほど駅の近くや商業地域に建てられるケースが多いです。なぜなら、高層建築物は《低層住宅地などの高さ規制が厳しい地域》には建てられないからです。
そのような規制もあって、マンションの「駅に近くて、利便性が高い」という傾向ができあがっています。一戸建てと比較した場合、駅からの近さはマンションが有利でしょう。
駅から近いマンションは、電車を使った移動に便利なだけでなく、売却するときに買い手が付きやすくなります。
▼資産価値が下がりにくい傾向がある
マンションの資産価値は、一戸建てに比べて下落しにくい傾向があります。
とくに鉄筋コンクリート造のマンションは、木造の一戸建てに比べて以下のように経済的耐用年数が長く設定 されています。そのため、木造一戸建てより建物の価値の下落が緩やかです。
- 木造:20~25年
- 鉄筋コンクリート造:40~47年
また、先述のとおりマンションは駅から近い利便性の高い場所 に建てられることが少なくありません。これも資産価値を維持する要因となっています。
人気エリアのマンションでは、購入後に価格が上昇するケースもあります。
▼段差が少ない(バリアフリー設計)
ほとんどのマンションは、ワンフロアで構成されています。そのため、一戸建て(平屋以外)に比べて室内移動の負担が少なく、家事動線もシンプルになる傾向があります。
段差の少ないマンションは、つまずいたり転落したりするのを防ぎやすいです。小さい子どもや高齢者がいるご家庭でも、安心して暮らせます。
▼セキュリティ対策がされている 傾向がある
マンションは、セキュリティが充実している傾向があります。具体例をあげてみましょう。
- オートロックが設置されている物件が多い
- 監視カメラが設置されている物件が多い
- 管理人が常駐している場合がある
- 人目が多く、防犯につながる
- 高層階のマンションは空き巣が侵入しにくい
ただし、マンションのセキュリティレベルは物件によって大きく異なります。購入を検討する際には、環境やセキュリティ設備をしっかりと確認することが重要です。
▼メンテナンスの手間が少ない
マンションは共用部分の清掃や維持管理を管理会社に任せるケースが多く、一戸建てに比べてメンテナンスの手間が少ない傾向があります。
大規模な修繕工事も、通常は管理組合が計画し、費用は修繕積立金からまかなわれます。そのため、居住者は基本的に専有部分のメンテナンスをおこなえば済みます。
「建物全体のメンテナンスをラクにしたい」あるいは「建物全体のメンテナンスは煩わしい」と感じる人には、一戸建てに比べてメンテナンスの手間が少ないマンションのほうが向いているでしょう。
マンションのデメリット
マンションの主なデメリットは、以下のとおりです。
- 騒音トラブルが生じやすい
- ランニングコストが高額になる傾向がある
- 駐車場にコストがかかる場合がある
- 管理規約に従って生活する必要がある
- 自由にリフォームできない場合がある
順番に、詳しく解説していきます。
▼騒音トラブルが生じやすい
マンションは、騒音トラブルが生じやすい傾向があります。壁や床、天井を隔てて隣家と接している構造上、どうしても足音や生活音などが伝わりやすくなります。
そのため、管理規約で演奏やペットの飼育を制限しているマンションが少なくありません。マナーやお互いを思いやる気持ちを持つことも大切になります。
マンションを選ぶ際には、防音性の高い物件を選ぶことが重要です。内覧時に、上下左右の部屋や外からの音がどれほど聞こえるかを確認しましょう。
▼ランニングコストが高額になる傾向がある
マンションは管理費と修繕積立金を支払う必要があるため、一戸建てよりランニングコストが高額になる傾向があります。
ですから、購入の資金計画を立てる際には、これらの費用を考慮に入れることがとても大切です。
管理費 | マンションの共用部分の維持管理のために使われる。共用廊下やエントランスなどの清掃、管理会社の委託費用などが含まれる。 |
---|---|
修繕積立金 | 将来の大規模修繕に備えて、区分所有者全員が資金を出し合い毎月積み立てる。マンション全体の価値を維持するために重要な費用。 |
ただし、マンションはこのような仕組みがあるため、資産価値を維持できる側面もあります。個人にかかる管理や修繕の負担も減ります。
▼駐車場にコストがかかる場合がある
一般的なマンションでは、車を所有する世帯はマンションの駐車場を別途契約する必要があります。駐車場を契約する場合は、管理費や修繕積立とは別に毎月の支払いが必要です。
マンションによっては、駐車場だけでなく駐輪場代も必要です。資金計画を立てる際には、この点も考慮に入れる必要があります。
▼管理規約に従って生活する必要がある
マンションでの生活は、管理規約という共同のルールに従う必要があります。ですから、マンションを選ぶ際には、管理規約の内容を事前に確認しておくことが重要です。
管理規約には、たとえば以下のようなことが規定されています。
- ペット飼育の制限(種類、大きさ、頭数など)
- 楽器演奏の制限(可否や、演奏可能な時間帯など)
- 駐車場の使用ルール(契約方法や使用料、使い方など)
- バルコニーの使用制限(手すりでの物干禁止、避難経路の確保など)
マンションのような集合住宅では、上述のような規約が必須です。このようなルールがないと、住民同士のトラブルが多発したり、良好な居住環境を維持できなくなったりします。
▼自由にリフォームできない場合がある
マンションでは、自由にリフォームできない場合があります。
たとえば窓や玄関ドア、バルコニーは共用部分となるため、勝手にリフォームできません。構造の制約で、キッチンの位置を大幅に変更することが難しいケースもあります。
管理規約によっては、リフォーム工事の内容に制限を設けている場合もあります。たとえば、オール電化の禁止や床材の防音性能の指定などです。
ただし「内装をすべて解体撤去して、新たに大空間をつくる」といった自由度は、一戸建てよりもマンションの方が高い場合があります。
一戸建て(一軒家)の特徴
つづいて、一戸建ての特徴をご紹介します。
一戸建て(一軒家)のメリット
一戸建ての主なメリットは、以下のとおりです。
- 一般的にマンションよりも広い
- 庭や駐車場を確保しやすい
- 騒音を気にせず生活しやすい
- 自分の意思でリフォームできる
- 建物が老朽化しても土地の価値は残る
順番に詳しく解説します。
▼一般的にマンションよりも広い
マンションの中にも広い物件は存在しますが、一般的には一戸建ての方が広さを確保できる傾向があります。
一戸建ては、2階・3階と複数のフロアに分かれています。そのため、部屋数を確保しやすく、人数が多い家族でもゆったりと暮らせます。
なお、令和5年度の住宅市場動向調査によると、延床面積の平均は以下のようになっています。
- 分譲一戸建て:121.9m²
- 分譲マンション:78.4m²
▼庭や駐車場を確保できる
一戸建ては、一般的に庭や駐車場を確保しやすいです。とくに庭に関しては、一戸建ての大きな魅力のひとつと言えるでしょう。
庭があれば、植物や野菜を育てたりバーベキューを楽しんだりできます。マンションでも庭(専用使用権)のある物件はありますが、1階に限定されたり、使用料が必要だったりします。
広い駐車場があれば、来客の際に重宝します。玄関の近くに車を止められる駐車スペースがあれば、買い物などの際の負担を軽減できます。
▼騒音を気にせず生活しやすい
一般的に一戸建ては、マンションよりも周囲の騒音を気にせず、また自身の生活音も過度に気遣うことなく生活できます。
子どもが走り回ったり、飛び跳ねたりしても、マンションほど神経質にならなくてもよいでしょう。楽器の演奏やペットの飼育に関しても、マンションのような制限が少ないです。
周囲の住宅への配慮は必要ですが、小さいお子さまのいるご家庭やペットを飼っているご家庭は、一戸建てのほうがのびのびと過ごせます。
▼自分の意思でリフォームできる
一戸建てのリフォームは、基本的に自分の裁量で自由に進められます。法規的に問題なければ、増築して部屋を広げることも可能です。
マンションのように、管理組合や規約による制限を受けることもありません。自分の都合のよい予算とタイミングで、必要なリフォームを実施できます。
▼建物が老朽化しても土地の価値が残る
木造一戸建ての場合、建物の法定耐用年数は22年とされており、築22年を超えると建物の資産価値がほぼゼロになります。しかし、土地はそのまま残り、価値を持ち続けます。
一戸建て(一軒家)のデメリット
一戸建ての主なデメリットは、以下のとおりです。
- 維持管理の負担が大きい
- 段差解消や動線の効率化が難しい
- 立地条件がマンションに比べて劣る場合がある
- 建物の資産価値が下落しやすい
- 光熱費が高くなる傾向がある
順番に、詳しく解説します。
▼維持管理の負担が大きい
一戸建ては、マンションに比べて維持管理に関する手間や費用負担が大きくなりがちです。一戸建ては独立性が高く、自由に生活できる反面、管理責任を自分で負わなければなりません。
一戸建ての場合、マンションの共有部分のように、管理を管理会社に任せることは一般的ではありません。清掃やメンテナンスなどは、すべて所有者自身でおこなう必要があります。
修繕や改修工事も、自分で計画して進めなければなりません。そのための費用も、自分で積み立てておく必要があります。
▼段差解消や動線の効率化が難しい
多くの一戸建ては、1階・2階と複数のフロアに分かれています。その構造上、段差解消や動線の効率化が難しい側面があります。
とくに1階に洗濯機、2階にベランダがあるご家庭では、洗濯の度に上下階を往復することになります。
高齢になったときのことを考えると、マンションまたは一戸建てでも1階のみで生活が完結できるよう設計しておくと安心です。
▼立地条件がマンションに比べて劣る場合がある
一戸建ては、マンションに比べて立地条件が劣る場合が少なくありません。マンションは駅までのアクセスがよい場所に建てられることが多く、周辺施設も整っている傾向があります。
ただし、一戸建ては利便性の他に 「静かな住環境」や「落ち着いた街並み」も重視される傾向があります。そのような環境を望む場合は、郊外の一戸建てを選択肢に入れてもよいかもしれません。
▼建物の資産価値が下落しやすい
一般的に木造一戸建ての資産価値は、マンションに比べて下落しやすい傾向があります。
築20年を超えた木造一戸建ては、建物価値が評価されず、土地の価格で取引されるケースが少なくありません。ただし、一戸建ての寿命は、維持管理の質によって大きく変わります。
近年では、寿命100年を目指して設計された「長期優良住宅」も登場しています。そのような質の高い家を建て、適切なメンテナンスをおこなうことで、建物の資産価値の低下を緩やかにできる可能性があります。
長期優良住宅は、床下及び小屋裏の点検口の設置等の劣化対策の措置が十分に施されていることから、劣化事象の発生リスクが他の住宅に比べて相対的に低く、また、仮に発生した場合でも早期発見が可能であり、経年による基礎・躯体の減価のスピードが遅い住宅であるととらえるべきである。
出典:国土交通省「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」
出典:国土交通省「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」
▼光熱費が高くなる傾向がある
先述のとおり、一戸建てはマンションより広い傾向があります。床面積が広くなるほど、冷暖房に必要なエネルギー量が増えるため、光熱費が高くなりがちです。
また、一戸建ては独立しているため、外気温の影響を受けやすくなります。そのため、上下左右を他の住戸に囲まれているマンションに比べ、断熱性では不利になります。
一方、断熱性能を高めた一戸建てなら、高い省エネ性を実現できます。太陽光発電も活用すれば、光熱費を実質的にゼロにすることも可能です。
【徹底比較】マンション or 一戸建て
あなたにとって「もっとも住まいに求めること」は何でしょうか?費用でしょうか?住み心地でしょうか?それとも、資産性でしょうか?
最後に、この3つの観点からマンションと一戸建てを比較してみたいと思います。
費用重視ならどっちが人気?
結論から言うと、費用でマンションと一戸建てを比較するのは非常に困難です。重視する費用項目によって、どちらがよいか変わります。
▼初期費用(物件価格と諸費用)
一般的に、物件価格は立地条件に左右されます。都心部ではマンション価格が高騰しているため、坪単価は一戸建てのほうが低くなる傾向があります。
一方、諸費用は一戸建てのほうが高くなる傾向があります。なぜなら、登記費用や外構工事費用などの負担が大きくなりやすいからです。
なお、2023年度のフラット35利用者調査によると、所要資金の平均(首都圏)は以下のようになっています。
- 建売住宅:4,199.3万円
- 分譲マンション:5801.2万円
物件費用と諸費用の総額なら、エリアにもよりますが、一戸建てのほうが抑えられる傾向があります。物件価格を重視したい場合は、一戸建てを中心に探すとよいでしょう。
▼ランニングコスト
多くのマンションでは、毎月「管理費」と「修繕積立金」がかかります。駐車場や共用施設の使用料がかかる場合もあります。
一戸建ては、こうした固定費はありません。しかし、自分で管理や修繕積立をする必要があります。また、火災保険も木造一戸建ては高額になりがちです。
光熱費や固定資産税も、一戸建てのほうが高額になりやすいです。ただし、ランニングコストは物件ごとに大きく異なるため、購入前によく確認することが大切です。
ランニングコストについて詳しく知りたい方は、私たち「住まいと暮らしのコンシェルジュ」にご相談ください。
提携するファイナンシャルプランナーと一緒に、お客様の状況に合わせて、ランニングコストを含めた資金計画のシミュレーションを作成いたします。
住み心地重視ならどっちが人気?
住み心地がよいのは、どちらでしょうか?これも、個々のライフスタイルや何を重視するかによって異なりますので、一概に優劣を付けられません。
それぞれの長所をあげて、比べてみましょう。まずはマンションからです。
- 駅や商業施設の近くに建てられることが多い
- 段差が少なく、幼児やお年寄りがいる家庭でも安心
- 高層階であれば、良好な眺望や通風、日当たりが期待できる
- 防犯設備が充実しているため、比較的安心
- 鉄筋コンクリート造のマンションは耐震性・耐火性が高い
- 2階以上の部屋では床上浸水の心配も少ない
- 掃除やメンテナンスの個人負担が少ない
一方、一戸建ての長所は以下のとおりです。
- 広い傾向があり、大家族でもゆったりと暮らせる
- 上下階の音を気にせず、のびのびと過ごせる
- 庭でガーデニングやバーベキューなどを楽しめる
- 自分の意思で家やお庭をリフォームできる
- 駐車場から家まで荷物を運ぶのがラク
- 自治会や町内会への加入は任意
住み心地に関しても、物件それぞれの状況や環境が大きく影響するため、個別に判断することが大切です。
しいて「おすすめ」をあげるとすれば、立地や利便性重視ならマンション、広さや独立性を重視するなら一戸建てが適しているでしょうか。
資産性重視ならどっちが人気?
資産価値の観点では、短期から中期的には需要が高く値崩れしにくいマンションが有利です。しかし、長期的に見ると《土地》という資産が残る一戸建てにも分があります。
マンションと戸建てでは、資産価値の推移に違いがあります。木造一戸建ての耐用年数は比較的短く、約20~30年ほどで土地の価格しか残らなくなるケースもあります。
一方、マンションは緩やかに価値が下がります。管理しだいでは築30年以上の建物でも一定の需要があり、築古物件でも売却しやすい傾向があります。
まとめ:マイホーム購入で迷ったら住まいと暮らしのコンシェルジュへ
マンションと一戸建てはそれぞれ長所と短所があり、優劣を付けられません。したがって、ご自身のライフスタイルや価値観に合う選択をすることが何より重要です。
マンションと一戸建ての選択で迷われた方は、東急株式会社「住まいと暮らしのコンシェルジュ」にご相談ください。私たちと一緒に、あなたにピッタリの選択肢を探してみませんか?
「予算や資金計画を立てたい」「気になるエリアの相場を知りたい」といったご要望にも、提携する不動産会社やファイナンシャルプランナーと一緒にお応えします。