本稿の概要 |
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・住宅の老朽化を直す資金の調達方法は、ローンや親族の援助、補助金、火災保険などがある ・費用を抑えてリフォームするには、修繕箇所の優先順位付けや工法の選択、建材の再利用が重要 ・建て替えコストを抑えるには、相見積りや間取りのシンプル化、規格住宅の活用が有効 |
「家が老朽化でボロボロになってきた」「でも、建て替えるお金なんてない」「なるべく費用をかけずにリフォームする方法ってないのかな」そんなふうに悩んでいませんか?
築年数が経った家は、設備の劣化や構造の老朽化など、放っておけない問題が次々と現れますよね。しかし、まとまった資金がないからといって、あきらめる必要はありません。
本稿では、さまざまな資金調達方法から費用を抑えてリフォームや建て替えを実現する具体的な工夫まで、わかりやすく解説します。ご自宅の老朽化でお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
家が老朽化でボロボロ・建て替えるお金がないときの対処法
老朽化した家をリフォームまたは建て替える費用を工面したい場合、主に以下のような資金調達方法があります。
- ローンを利用する
- 親族に援助してもらう
- 補助金制度を活用する
- 火災保険を利用する
順番に詳しく解説します。
ローンを利用する
《老朽化した家を直すための資金》を調達するもっともポピュラーな方法は、ローンでしょう。具体的には、以下のような種類のローンが考えられます。
住宅ローン | 新築住宅と同様に、建て替えやリフォームでも通常の住宅ローンを利用できる場合がある。高額を低金利で長期間借りられる。 |
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親子リレーローン | 親と子がひとつの住宅ローンを契約し、返済をリレー方式でおこなう。親が返済を始め、後に子がその返済を引き継ぐ。親単独よりも長期借入ができる。 |
建て替えローン | 既存の住宅ローンの残債と、新たに借りる建て替え費用を一本化して借りられる。返済計画の管理が容易になるが、一般的に審査が厳しい。 |
リフォームローン | 使い道を住宅の修繕や改修に特化したローン。小規模の短期借入を想定しているため、住宅ローンに比べて借入限度額が低く、金利が高くなる傾向がある。 |
フリーローン | 借入金の使い道が自由な個人向けのローン商品。借入れる度に審査があり、カードローンに似ているが、より低金利で借り入れできる傾向がある。 |
また、建て替え時に《賃貸併用住宅》にすれば、家賃収入でローン返済を補うことも可能になります。資金的に難しかった建て替えも、実現しやすくなるでしょう。
ただし、賃貸部分の面積が建物の過半を占めると住宅ローンを利用できなくなる可能性があります。その場合は、住宅ローンよりやや金利が高い《事業用ローン》を利用することになります。
なお、ローンを利用する際には以下の点に注意が必要です。
審査 | ローン商品ごとに審査があり、審査内容は金融機関やローン商品ごとに異なる。そのため、ご自身の状況に合わせて選択することが重要。 |
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金利 | ローンは借り入れであるため、当然ながら金利が発生する。ムリのない生活設計に基づいて、返済計画を立てる必要がある。 |
自己資金 | 建て替えの手付金や中間金は、自己資金からまかなう必要がある。自己資金での支払いが難しい場合は「つなぎ融資」の利用も検討。 |
リフォームローンの中には、独自の無金利ローンや後払いプランを用意しているところもあります。そのようなサービスも含めて、自分の状況に合ったローンを比較検討することが大切です。
また、他の資金調達方法との併用もご検討いただくと、よりリフォームや建て替えの実現可能性が高まるでしょう。
親族に援助してもらう
家を直すお金がない場合に、親族から借りることも選択肢のひとつです。とくに、一緒に暮らす両親や祖父母とお金を出し合って新しく家を建て替えるのは、よくある解決策です。
ただし、親族からの援助を受ける際には《贈与税》に注意が必要です。たとえば、親名義の実家を子供が費用を出してリフォームするケースでは、子から親への贈与と見なされる場合があります。
贈与税を回避できる制度がいくつかありますので、主なものをあげておきます。
上述の制度はそれぞれ要件がありますので、利用を検討される場合は事前に確認しておくとよいでしょう。
なお、親族にお金の援助を依頼する際は、返済計画等のデリケートな話が必要になるため、他人以上の配慮が必要になる場合があります。契約書を交わしたり、返済計画を提示したりするなど、良好な関係を維持するための配慮が求められます。
補助金制度を活用する
国や自治体によっては、リフォームや建て替えに対して補助金制度を設けている場合があります。たとえば、令和7年度の国の補助金制度として以下のものがあります。
また、お住まいの自治体(市区町村)によっては、独自の補助金制度を設けている場合があります。たとえば、以下の工事では補助制度を利用できる可能性があります。
- 解体工事
- 既存住宅の防災・耐震性強化
- 既存住宅の省エネ・環境対策
- 既存住宅のバリアフリー化
- 既存住宅の二世帯住宅化
自治体の補助金制度は、以下のサイトで検索できます。お住まいの地域で利用できる制度がないか、チェックしてみてはいかがでしょうか。
なお、多くの補助金制度は《後払い方式》を採用しています。いったん自分で全額の支払いを済ませ、工事完了時に還付される形です。
ですから、建て替えやリフォームの資金が不足している場合は、他の資金調達方法との併用が前提になります。
また、補助金を申請する際はさまざまな要件を満たす必要があります。制度ごとに予算もありますので、事前に公式サイトで確認することが重要です。
火災保険の利用が可能かを確認する
資金調達方法として、火災保険も場合によっては有効です。契約内容しだいでは、火事による損害だけでなく、台風や大雪などの自然災害による被害も補償対象となります。
築年数が古い家の場合、過去の自然災害による被害に気づいていないこともあり得ます。たとえば、屋根の損傷や雨どいの歪みなどが台風によるものなら、保険金で直せる可能性があります。
ただし、火災保険を利用する場合は以下の点に注意が必要です。
- 経年劣化は火災保険の対象外
- 申請期限が設けられている場合がある(例:発生から3年)
- 保険金が支払われるかどうかは、保険会社の判断にもよる
上述の条件があるため、住宅の損傷に必ず火災保険が使えるわけではありません。
また、中には「火災保険で自己負担なく直せる」と言って契約させる悪質なリフォーム会社もありますのでご注意ください。
まずは、ご自身の火災保険の契約内容を確認することをおすすめします。
火災保険を申請する際には、被害箇所の特定や原因の証明など、専門的な知識が必要となるケースが少なくありません。個人での申請は、ややハードルが高いと言えます。
また、自力では気づきにくい損傷も少なくないため、専門会社による調査・申請代行サービスを利用すると安心です。
なるべく費用を抑えてリフォームする方法
予算が限られている中でも、リフォームのやり方を工夫すれば老朽化した家を効果的に直すことが可能です。
ここでは優先順位の付け方やコストダウンのコツ、業者選びのポイントなど、費用を最小限に抑えるリフォーム術をご紹介します。
修繕箇所の優先順位を付ける
限られた予算で最大の効果を得るには、まずリフォームの優先度を明確にすることが重要です。
家全体を一度に直そうとすると費用が膨らむため、緊急性・重要性の高い部分に絞って改修することが大切です。
たとえば、以下は優先的に手を付けたいところです。
- 耐震補強など、人命に関わるところ
- 雨漏りの修繕など、緊急性が高いところ
- 傷みが激しく生活に支障が出ている設備
優先順位を付ける際は、家族とよく相談して《絶対に直したいところ》と《我慢できるところ》を仕分けしましょう。
見た目の改善を優先したくなるところですが、安全性・機能性の回復を優先するほうが限られた予算でも効果的な改修ができます。
住宅診断(インスペクション)も有効です。どの部分を先に直すべきか専門家の意見をもらえるので、予算配分の判断材料になります。
また、工事範囲を段階的に広げるのも一案です。
まず最低限必要な修繕を実施して、住みながら少しずつ他の箇所を直していくことで、一度に大金を用意せずに済みます。
工法の選択などでコストダウンを図る
リフォームのコストを抑えたいとき、工法の選択が重要です。解体撤去を避けたり重ね張り(カバー工法)したりすると、費用を抑えやすいです。
具体例をあげてみます。
- 窓リフォーム:窓枠ごと交換するのではなく、内窓を設置する
- 屋根リフォーム:既存の屋根材を撤去せず、重ね張りする
すべて新品に交換せず、使えるものを活用するのも有効です。たとえば、キッチンやお風呂など寿命が残っている設備をそのまま使用すれば、購入費用と処分費用を節約できます。
一方、同時施工で重複コストを削減する方法もあります。たとえば、屋根と外壁の塗装を同時におこなえば、別々に足場を組む必要がなく足場代が1回分で済みます。
水回り設備も、まとめて交換するパック商品を利用すれば、個別に頼むよりトータル費用を下げられる場合があります。
老朽化でボロボロの家を低コストで建て替える方法
「建て替えには大きな費用がかかるからムリ」とあきらめていないでしょうか?
建て替えでも、工夫しだいでコストを抑えられます。大規模なリフォームをご検討中なら、ローコストの建て替えもあわせて検討する価値があります。
最後に、建て替えの費用削減方法をご紹介します。
相見積りなどでコストダウンを図る
建て替え費用を安く抑えるには、住宅メーカーや工務店から相見積りを取ることが重要です。2社以上にプランと見積りを依頼し、価格や工事内容を比較検討しましょう。
建て替えの場合なら、解体工事業者や建築会社、外構工事業者を相見積りで比較検討できます。複数社に同じ条件・要望で見積りを実施してもらうことで、提示金額の差や内訳の違いが見えてきます。
なお、最安値だからといって即決するのはよくありません。建築会社選びで失敗しないためには、プラン・金額・担当者との相性などを多角的に比較して見極めることが大切です。
ご不安な方は、私たちコンシェルジュにご相談ください。建築士等の資格を持つコンシェルジュが、建築会社のご紹介や比較検討、選定までお手伝いいたします。
間取りをシンプルかつ必要最小限にする
建て替えの際、あれこれこだわると費用がかさんでしまいます。建物の設計をシンプルにすることが、建て替えのコスト削減に直結します。
一般的に《総2階建て》の家(1階と2階の形が同じ箱型の家)は施工が比較的容易になるためコストダウンしやすいです。さらに、部屋数を最小限に抑えることで、材料費や労務費を減らせます。
最近は、設備や設計を規格化して低価格を実現した《規格住宅》も数多く登場しています。規格住宅は、あらかじめ仕様を標準化することで注文住宅よりも手頃な価格で建てられます。
規格住宅と一般的なハウスメーカーの注文住宅のあいだには、目安として以下の価格差があります。
- 規格住宅:坪単価60万円~
- 注文住宅:坪単価100万円~
規格住宅は「豪華でなくていいから建て替えたい」という場合には有力な選択肢になります。住宅性能やデザインの自由度は多少劣る傾向がありますが、シンプルな家がいい方には適しています。
建て替えはどうしても数千万円単位の費用がかかりますが、上述のような工夫で総費用を圧縮できます。ローンを組む際もムリのない額に収められれば、将来の返済負担を軽減できるでしょう。
まとめ:建て替えやリフォームで悩んだら専門家に相談しよう
資金が少ない場合の《老朽化した家の対処法》を総合的に解説しました。ローンや補助金等で資金を確保しつつ、工夫して建て替えやリフォームの費用を抑えるのが基本戦略になります。
一方、状況によっては発想の転換も必要です。たとえば、思い切って売却し、その資金で住み替えるのも選択肢のひとつでしょう。賃貸併用住宅で家賃収入を得て、返済に充てる方法もあります。
困ったときは専門家にも相談しながら、将来に向けたお住まいのプランを練りましょう。限られた予算でも、専門家の知見を活用すれば、今より快適な住まいを実現できる可能性が高くなります。
私たち東急株式会社「住まいと暮らしのコンシェルジュ」では、建築や不動産の資格を持つコンシェルジュが、建て替えやリフォームでお悩みのお客さまへ中立の立場でアドバイスを実施しています。
ファイナンシャルプランナーを交えた資金計画の作成から建築会社・リフォーム会社の比較検討、あるいは住み替え先探しまでお手伝いできます。選択肢を絞り込めていない方も、お気軽にご相談ください。