本稿の概要 |
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・日銀がマイナス金利政策を解除したが、現状では変動金利への影響はほぼなし ・6月以降、追加の利上げがいつあってもおかしくないが、急激な上昇は考えにくい ・変動金利型住宅ローンを利用するなら、金利上昇リスクの対策を |
ご存じのとおり、2023年4月から、日銀の総裁が植田氏に代わっています。その植田総裁率いる日銀が、2024年3月に開催した金融政策決定会合で「マイナス金利政策」を解除しました。
それを受けて、これから家を買う方や現在住宅ローンを返済している方のあいだで「今後、金利はどうなるのだろう?」と不安が広がっています。あなたも、憂慮されているのではないでしょうか?
本稿では、マイナス金利政策の概要や解除後の動き、そして今後の展開予測について解説します。住宅ローンの新規借入や借り換えでお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
日銀のマイナス金利解除で、住宅ローンはどうなる?分かりやすく解説
冒頭でお伝えしたとおり、日銀が2024年3月の会合で「マイナス金利政策」の終了を決めました。黒田前日銀総裁時代に取り組んできた「金融緩和政策」を転換した形です。
日銀の政策金利がマイナスからゼロやプラスに移行すると、民間銀行の預け入れや貸し出しの金利も上昇する傾向があります。つまり、預金や住宅ローン等の金利が上昇する、ということです。
ですから、これから家を買う方や現在住宅ローンを返済している方は、悩むことになります。住宅ローンの返済額が上がれば家計を圧迫しますので、不安になって当然ですよね。
しかし、今のところマイナス金利解除の影響はほぼありません。どうして影響がなかったのか、そしてこれからどうなるのか、マイナス金利の概要を復習しながら見ていきましょう。
マイナス金利政策とは
そもそも、マイナス金利政策とはどういうものなのでしょうか?どんな流れで採用されるに至ったのでしょうか?
黒田前日銀総裁時代にアベノミクスの一矢として「異次元の金融緩和」が実施されたことは、記憶されている方が多いでしょう。
これは、マネタリーベース(日銀による資金供給量)の拡大を通じて消費や投資を促進することで、デフレから脱却しようと試みるものでした。
しかし、民間銀行がお金を日銀の当座預金に預けてしまい、融資に回わらない事態が発生しました。なぜなら、当座預金に預けることで、ゼロ金利の時代に0.1%の利息を得られたからです。
これでは、消費や投資は伸びません。そこで、2016年1月に導入されたのが「マイナス金利政策」です (日銀の金融政策史上、初めて)。
マイナス金利政策の目的は、金融機関が企業や家計にお金を回すよう促すことです。
具体的には、日銀が金融機関から預かる当座預金の一部にマイナス0.1%の金利を適用して、預金すると損をする状況を作り出しました。要するに、一種のペナルティーですね。
しかし残念ながら、マイナス金利政策を導入しても、すぐにはデフレ脱却にはつながりませんでした。金融機関の収益が圧迫されたり年金基金の運用に悪影響が出たりと、副作用も表面化しました。
住宅ローンも、マイナス金利政策の直接的な影響はありませんでした。しかし間接的には、銀行間の顧客獲得競争が激化したことで、実行金利が大幅に低下しています。
マイナス金利解除の背景
植田総裁率いる日銀が金融政策を転換した理由は、デフレ脱却の兆しが見えてきたからでしょう。日銀は「物価と賃金の好循環の強まり」が確認されてきているとしています。
具体的には、3月に発表された春闘の回答状況で「プラス5.28%」という高水準の賃上げが確認されました。これにより、日銀は「2%の物価安定目標が見通せるようになった」と説明しています。
個人消費については少し弱さがあるものの、賃上げの動きが広がることで今後持ち直していくのではないか、と見られています。
このような流れから、日銀は「大規模な金融緩和は、その役割を果たした」と考えました。
とは言え、現在のインフレへの移行はコストプッシュ型(生産・流通コストの高騰により物価が上がる)です。人手不足や、ロシア・ウクライナ問題などの影響ですね。
これがデマンドプル型(賃金が上がり消費が増え、物価が上がる)に変わらなければ、インフレの好循環が生まれません。コストプッシュ型のままでは、賃金上昇が物価上昇に追いつかないからです。
今後は、日銀の想定どおりに物価・賃金・消費が推移していくのか、確認していくことになります。
マイナス金利解除後の固定金利と変動金利の動向
マイナス金利政策の終了を受け、住宅ローン金利の上昇が見込まれます。実際、固定型の金利はすでに上昇傾向にあります。
一方、変動型は大手が軒並み金利を据え置いています。三井住友信託に至っては、0.075%引き下げました。
金融機関名 | 3月の金利 | 4月の金利 | 5月の金利 |
---|---|---|---|
三菱UFJ銀行 | 0.345%~ | 0.345%~ | 0.345%~ |
三井住友銀行 | 0.475%~ | 0.475%~ | 0.475%~ |
みずほ銀行 | 0.375%~ | 0.375%~ | 0.375%~ |
りそな銀行 | 0.340%~ | 0.340%~ | 0.340%~ |
三井住友信託 | 0.405%~ | 0.330%~ | 0.330%~ |
固定金利と変動金利が違う動きを見せているのは、影響を受ける指標がそれぞれ違うからです。固定金利は日銀の長期金利政策の影響を、変動金利は同じく短期金利政策の影響を間接的に受けています。
変動金利の基準金利は、短期金利の影響を受ける「短期プライムレート (優良企業向け貸出金利)」を参考に決定しています。じつは、マイナス金利が導入された際、短プラは下がりませんでした。
それが理由か、今回のマイナス金利解除でも短プラを引き上げる動きにつながりませんでした。変動金利の動向は、今後の日銀の短期金利政策しだい、ということになるでしょう。
マイナス金利解除は、住宅ローンの変動金利型にどう影響する?
では、今後の変動金利の動向について考察してみましょう。これから、変動金利は上がっていくのでしょうか?
マイナス金利解除による変動金利への影響
先述のとおり、変動金利は短期金利の影響を受けます。つまり、日銀の政策しだいで変動金利が変わる、ということです。
では、日銀はどのようなアナウンスをしているのでしょうか?―― 4月26日の金融政策決定会合後の記者会見で、植田総裁は以下のように述べています。
そのうえで、以上のような経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになりますが、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えています。
出典:日本銀行 総裁記者会見(2024年4月26日)(※ 太字は筆者による)
「当面、緩和的」とは、追加の利上げに慎重な姿勢ということです。
4月26日の金融政策決定会合は、円安阻止のために利上げに前向きな姿勢を見せると予想されていました。しかし、ふたを開けてみると、前月の方針を維持する内容でした。
一方、9人いる日銀政策委員会(最高意思決定機関)から金融緩和を推進してきた「リフレ派」とされる方の人数が減っています。これを「利上げに向けた地ならし」と見る向きもあるようです。
次の利上げはいつ?どれくらい上がる?
次に日銀が政策金利を上げたときには、いよいよ住宅ローンの変動金利も上がる可能性があります。では、次の利上げはいつごろになるのでしょうか?
日銀の金融政策決定会合は「1月、3月、4月、6月、7月、9月、10月、12月」にあります。市場関係者のあいだでは、6月以降、いつの会合で利上げされてもおかしくないと見られています。
中でも、展望レポート(金融政策の考え方をまとめた報告書)が出される7月と10月が有力視されています。しかし、こればかりはどうなるか分かりません。
追加の利上げは、さまざまな事象を勘案しながらタイミングを計ることになるでしょう。住宅ローンの金利が気になる方は、政策決定会合と、以下に着目してみてはいかがでしょうか。
- 物価・賃金・消費の動向
- 原油高(物価に影響)
- 為替レート(物価に影響、円安の動きに着目)
- 中小企業の賃上げ(賃金に影響)
- 9月の自民党の総裁選(政策を動かしにくくなる?)
- 11月のアメリカ大統領選(トランプ氏再選で円高に?)
さて、利上げがあったとして、どれくらい上がるのでしょうか?
先述のとおり、植田総裁は政策について「当面、緩和的」と述べています。ですから、追加利上げがあったとしても、急速に上昇していく可能性は低いと考えられています。
国際的には、1回の利上げ幅は「0.25%」が定着しています。よって日銀は物価や賃金、消費の動向を見ながら、半年ないしは1年おきに「0.25%」ずつ上げていくのではないかと見られています。
金利ある世界で大切になる、住宅ローンの返済計画の立て方
マイナス金利政策の解除で、今後は「金利ある世界」が戻ってきそうです。このような情勢で、住宅ローンの返済計画はどのように立てればいいのでしょうか?
依然として固定金利と変動金利の金利差が大きく、しばらくは変動金利の人気が続きそうです。もしも、変動金利型の住宅ローンを選ばれるのであれば、金利上昇リスクへの対策が必要でしょう。
すでに住宅ローンを借りている方は、借り換えを検討するべきタイミングかもしれません。
変動金利派は、金利上昇リスクへの対策を考えておこう
今後の日銀の政策については、個人ではどうしようもありません。住宅ローンへの影響に着目しながら、臨機応変に対応するしかないでしょう。
ですから、変動金利型の住宅ローンを選ばれる際は、万が一の金利上昇に備えておくことが大切です。固定金利型を選択した場合の返済額を計算して、差分を有効利用してみてはいかがでしょうか?
たとえば、こんな活用方法があります。
- 繰上返済をおこない、元金を減らす
- 資産運用が得意な方なら、投資に回す
- 自分のスキル向上に投資する
たとえば、変動金利型の住宅ローンを選ぶことで、固定金利型より月々の返済額が1万円下がったとします。その1万円を繰上返済の原資にすることで、早く元金を減らせます。
また、1万円を投資に回し平均的な利回りのリターンが得られたら、将来的に変動金利が上昇した際に取り崩したり、繰上返済に回したりできるでしょう。
自分のスキル向上に投資するのも、いいかもしれません。金利上昇局面では、所得も上昇しやすくなります。金利の上昇以上に所得を上げられたら、返済に困ることはないでしょう。
すでに返済中の方は、借り換えを検討してみよう
すでに返済中の方は、借り換えを検討してみてはいかがでしょうか?現在のように「これから金利が上がるかもしれない」というタイミングは、借り換えを検討するのによい時期です。
以下の借り換えの場合、借り換え前後の金利差が大きいほど、借り換えによる利息軽減メリットが大きくなります。
- 変動金利 ⇒ 変動金利
- 固定金利 ⇒ 固定金利
- 固定金利 ⇒ 変動金利
今後、金利が上昇局面を迎えるならば、今が借り換えのチャンスと言えます。
一方「変動金利 ⇒ 固定金利」の借り換えでは、利息軽減メリットを得づらいでしょう。しかし、今後の金利上昇リスクを回避できる安心感を得られます。
借り換えを進めた結果、今融資を受けている銀行から引き留められ、金利引き下げを打診してもらえるケースもあるでしょう。
借り換えが活発化していますので、この機会を逃さないようにしたいですね。
まとめ:マイナス金利解除で住宅ローンはどうなる?不安な方へ
マイナス金利政策の概要や、解除されたあとの動き、そして今後の展望をご紹介しました。ご覧いただいたことで、マイナス金利政策や住宅ローン金利の理解が深まったのではないでしょうか?
とは言え、住宅ローンの返済計画は属人性が強く「一般論は分かったけど、私はどうすれば?」と感じた方もおられることでしょう。
この機会に宅ローンの基本的なしくみを復習して、日銀の金融政策に注目しつつ、ご自身のライフプランから見直してみてはいかがでしょうか?きっと、住宅ローン選びがスムーズになりますよ。
東急株式会社「住まいと暮らしのコンシェルジュ」では、住宅ローンのシミュレーションもおすすめしております。私たちと一緒に、あなたにピッタリの住宅ローンや金利タイプを見つけてみませんか?
「一度、相談してみようかな」と思われた方は、お気軽にご来店ください。セミナーやイベントも開催しておりますので、ぜひご活用ください。
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短期プライムレートは、日本銀行(以下、日銀)の政策金利の影響に大きく左右されますので、日銀の政策の動きに注目しましょう。
固定金利は直近に発行された10年満期の利付国債の利回りが代表的な指標になっています。
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一般的に固定金利は、短期金利より早いタイミングで金利が上下します。変動金利のものを金利が上がってから固定に切り替えようとすると、固定金利はすでに上がっているということになりますから注意が必要です。
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次に、これまでの金利の推移を振り返ってみましょう。
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