50代・60代から考える老後の住み替え|住まいの選択肢とポイントを解説

50代・60代から考える老後の住み替え|住まいの選択肢とポイントを解説

本稿の概要
⏵50代や60代は老後の見通しを立てやすく、体力や判断力も充実しているので、老後の住まいを考えるぴったりのタイミング。
⏵リフォーム/戸建て/マンション/賃貸/シニア住宅/子世帯同居を比較し、それぞれのメリットや注意点を整理・理解することが大切。
⏵住まい選びの判断軸は、身体の変化への対応・資金の持続性・日常生活の利便性。早期に検討を始めると後悔を防ぎやすい。

人生100年時代と言われる今、「老後をどこで、どう過ごすか」は重要なテーマです。老後の見通しを立てやすく、体力や判断力も充実している50代・60代こそ、老後の住まいを考える好機です。

老後の暮らしを見据えた住み替えには、多くの選択肢があります。それぞれメリットだけでなくデメリットも持ち合わせていますので、自分たちに合った選択肢を選ぶことが何より大切です。

本稿では、50代・60代の方向けに、老後の住み替えに関する代表的な選択肢を比較しながら、住まい選びのポイントもあわせてご紹介します。ぜひ、最後までご覧ください。

住み替え後の住まいの選択肢とメリット・デメリット

老後の住み替えには、さまざまな選択肢があります。

「今の家を直して住み続ける」「新しい地域に引っ越して、一から生活を始める」「シニア住宅に移る」など、ライフスタイルや価値観によって、最適な住まいは人それぞれ異なります。

ここでは、主な住まいの選択肢ごとに、その魅力と注意点を整理し、どんな人に向いているかをご紹介します。

将来の暮らしを具体的にイメージしながら、ぴったりの選択肢を見つけていきましょう。

リフォーム・建て替え


リフォーム・建て替え
慣れ親しんだ環境で、自分らしい理想の住まいを再構築したい方におすすめなのが、リフォームや建て替えです。

今ある家を生かしつつ、老後の暮らしにフィットした間取りや設備に整えることで、住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができます。

▼メリット(魅力)


リフォームや建て替えは、引っ越しによる生活環境の変化やストレスを感じずに済みます。ご近所づきあいや地域のかかりつけ医との関係も保ち続けられます。

また、長年の思い出が詰まった住まいを生かせるのも大きな利点です。愛着のある家に新たな命を吹き込む「リフォーム」は、精神的な安心感にもつながるのではないでしょうか。

さらに、物件の売却や新居探しといった手間がないことも見逃せません。

▼デメリット(注意点)


一方で、大規模なリフォームや建て替えをおこなう場合、数か月間の仮住まいが必要になります。住まい探しや引っ越し作業、家財の一時保管など、手間と費用がかかる点には注意が必要です。

また、リフォームの場合は既存の構造によって希望する間取りに変更できないこともあります。著しく老朽化が進んでいる場合は、改修自体が困難なケースもあります。

さらに、現在の周辺環境や利便性を変えられないというデメリットもあります。騒音や近隣トラブル、交通の不便さなどに悩んでいたとしても、それらを改善できません。

一戸建てへ引っ越し


一戸建てへ引っ越し
ガーデニングを楽しみたい」「気兼ねなくペットと過ごしたい」―― そんな思いをかなえてくれるのが、一戸建てへの住み替えです。

新しい土地で、理想の老後を心機一転スタートさせたい方にとって、有力な選択肢となります。

▼メリット(魅力)


一戸建ての魅力は、なんと言っても暮らしの自由度が高いことです。マンションのように「階下への音の配慮」に神経をとがらせなくて済みます。リフォームに対する制限や規約もありません。

また、資産価値の維持という点でも、一戸建ては有利です。建物の価値は経年で下がりますが、土地は状況によっては資産価値を保ち続けます。

住まいの形を自由に選べるところも魅力です。たとえばワンフロアで暮らせる平屋を選んだり、2階建てを選んで「1階を生活空間・2階を来客用」にしたりと、暮らし方に合わせた選択が可能です。

▼デメリット(注意点)


一方で、一戸建てはメンテナンスのすべてを自分でおこなう必要があります。体力や時間の負担だけでなく、費用を積み立てておく計画性も求められます。

また、防犯や災害への備えも自分でおこなう必要があります。低層の住宅は侵入されるリスクが高く、高齢者のみで暮らす予定であれば、防犯設備の導入を検討したいところです。

生活動線が長くなりやすい点も留意してください。とくに2階建てや3階建ての場合は、老後に階段の上り下りが負担になることがあります。

マンションへ引っ越し


マンションへ引っ越し
駅の近くで暮らしたい」「将来の体力に不安があるから、管理のラクな住まいがいい」―― そんな方におすすめなのが、マンションへの住み替えです。

とくに、バリアフリーやセキュリティを重視したい方にとって、マンションは非常に魅力的な選択肢です。

▼メリット(魅力)


マンションでは、共用部分の清掃や修繕、建物全体の管理は管理会社や管理組合が担ってくれます。自分でメンテナンスをおこなうのは、専有部分だけで済みます。

多くのマンションは、駅周辺や都市部のアクセスの良いエリアに位置しています。公共交通機関の利用や、買い物・病院へのアクセスがしやすく、車を使わない生活が可能な物件も多いです。

バリアフリーやセキュリティの整った住環境も魅力のひとつです。ひとり暮らしや高齢者だけの世帯でも、比較的安心して暮らせます。

▼デメリット(注意点)


一方で管理費や修繕積立金、駐車場代など、物件や使用状況に応じて徴収されます。物価の上昇や建物の老朽化により、将来的に金額が上がる可能性もあるため、長期的な資金計画が欠かせません。

リフォームに制限がある点も、マンション特有の注意点です。壁や柱、ベランダなどは共用部分にあたるため、勝手に手を加えることができません。水回りの位置も、制限を受ける場合があります。

騒音トラブルにも気を付けたいところです。上下階や隣室と接しているため、生活音が気になったり、逆に自分たちの音が迷惑になったりすることがあります。

賃貸住宅へ引っ越し


賃貸住宅へ引っ越し
初期費用を抑えたい」「将来の体調や生活に応じて柔軟に住まいを変えたい」―― そんな方にとって、賃貸住宅への住み替えは有力な選択肢です。

持ち家に縛られず、必要に応じて環境を変えられる自由度の高さが、賃貸住宅の大きな魅力と言えるでしょう。

▼メリット(魅力)


賃貸住宅は購入頭金や登記費用、ローン手続きといった負担がなく、手元に流動的な資金を残せます。老後の生活費や医療費に不安を感じる方にとって、大きな安心材料になるでしょう。

また、選択肢の幅が広いのも賃貸ならではのメリットです。駅近のコンパクトなマンションや郊外の広々とした一戸建てなど、状況に応じて柔軟に選べます。

さらに、気軽に住み替えができることも大きな利点です。たとえば、将来的に夫婦どちらかが介護施設に入居する際に、残るほうは単身向けの物件に移る ―― といった選択も可能です。

▼デメリット(注意点)


一方、賃貸住宅は毎月家賃を支払い続けなければなりません。年金生活に入ると、毎月の家賃が家計を圧迫する可能性があります。また、支払った家賃は資産として手元に残りません。

契約更新の手間や不確実性にも注意が必要です。定期的な契約更新にともなう手続きや費用が発生するだけでなく、大家さんの事情で更新ができなくなる場合もあります。

高齢になると、入居を断られるケースがある点も注意が必要です。家賃滞納のリスクや、孤独死への懸念から、高齢者の入居は敬遠される場合があります。

シニア住宅へ引っ越し


シニア住宅へ引っ越し
将来、介護が必要になったときに備えたい」「日常的に見守ってもらえる環境で安心して暮らしたい」―― そんな希望をかなえてくれるのが、シニア住宅への住み替えです。

シニア住宅にはさまざまな種類があり、設備やサービス、費用の水準も多様です。自立した高齢者向け住宅や介護付きの有料老人ホームなど、ニーズに合わせた住まいを選べます。

▼メリット(魅力)


シニア住宅は、バリアフリーはもちろん、設備や共有スペースも高齢者の利用を前提とした設計になっています。日々の見守りサービスや緊急時の対応も充実しているため、万が一のときも安心です。

中には、介護サービスや医療機関と連携しており、必要なときにスムーズに介護・医療を受けられる施設もあります。

同じ高齢者同士が集まって暮らすため、新しい友人をつくりやすいところも魅力です。イベントやレクリエーションなども活発に実施されていることが多く、孤独を感じにくい環境と言えるでしょう。

▼デメリット(注意点)


一方、施設ごとのサービスや雰囲気の差が大きい点には注意が必要です。「シニア住宅」と一口に言っても、施設によってサービスの内容や介護体制、職員の対応などにバラつきがあります。

また、費用が高額になる傾向があることも忘れてはいけません。月々の家賃・食費・サービス費用だけでなく、入居時に高額の一時金が必要な施設もあり、長期的な資金計画が求められます。

外出や来客、共用スペースの利用にルールがあり、生活の自由度が制限される可能性もあります。自分のペースで自由に暮らしたいと考える方にとっては、やや窮屈に感じるかもしれません。

子世帯と同居


子世帯と同居
家族で支え合いながら暮らしたい」「孫の成長を身近に感じたい」―― そうした思いを持つ方にとって、子世帯との同居は魅力的な選択肢です。

親世帯と子世帯のニーズを相互に充足できれば、経済的にも精神的にも双方にとって大きなメリットがあります。

▼メリット(魅力)


子世帯との同居は、何かあったときにすぐ助けてもらえるという安心感があります。子世帯にとっても、親の体調や生活の変化を日常的に把握しやすくなります。

また、子育てや家事の相互支援ができる点も魅力です。親世帯が孫の世話をしたり、子世帯が買い物に付き添ったりすることで、双方向の支え合いが可能になります。

経済的なメリットも見逃せません。生活費の一部を分担することで、世帯全体の支出を抑えられる可能性があります。大幅な住み替え費用の削減も可能です。

▼デメリット(注意点)


一方で、生活リズムや価値観の違いから、お互いの距離感に悩むケースも少なくありません。住空間の工夫や日常的な気遣いが、円満な同居生活には欠かせません。

家事・育児・お金に関する意見の食い違いにも注意が必要です。ちょっとしたすれ違いがストレスの原因になりやすく、円滑なコミュニケーションが求められます。

また、親が要介護状態になった際、介護の負担が同居家族に偏り、心身の疲弊や関係悪化を招きがちです。事前に外部サービスの活用等について話し合っておくことが大切です。

高齢になってからの子世代との同居は、リフォームが必要になるケースが多い点も注意が必要でしょう。


東急株式会社「住まいと暮らしのコンシェルジュ」では、住み替えに関するさまざまな選択肢の中からご自身に合った方向性を見つけるお手伝いをしています。

住み替え先の検討で迷っておられる方は、お気軽にご相談ください。

後悔を防ぐ!老後の住み替えを検討する前に知っておきたいこと

ここからは、失敗や後悔を避けるために知っておきたい「検討のタイミング」と「住まい選びの視点」をご紹介します。

適切なタイミングとは



50代・60代は、住み替えを本格的に検討し始めるのにぴったりのタイミングです。体力・判断力が充実しているうちに余裕を持って準備を始めることで、失敗を防ぎやすくなります。

▼50代・60代は心身ともに元気


物件探しのために何件も足を運んだり、複雑な契約内容を理解したり、引っ越し作業を乗り切ったりするには、ある程度の体力と気力が必要です。

70代・80代になってからでは、体力の衰えや認知機能の変化により、これらの作業が大きな負担になる可能性があります。

▼子どもが独立する時期を迎える


50代・60代は、多くの場合子どもたちが独立し、広すぎる家を持て余し始める時期です。「管理が大変だな」と感じ始める方も少なくないでしょう。

ライフステージの変化に合わせて、住まいのあり方を見直すのに適したタイミングです。

▼定年退職後の生活が見えてくる


50代・60代は定年退職が迫る時期であるため、退職金や年金収入など、具体的な老後の資金計画が見えてきます。住み替え先の予算も、立てやすくなる時期です。

自由な時間も、増えてくる年代でしょう。情報収集や物件探しに専念しやすく、じっくりと住み替えの計画を立てられるのではないでしょうか。

▼現在の住まいの老朽化が目立ち始める


長年住んだ家は、築年数を経るごとに水回りや外壁、屋根などの老朽化が目立ち始めます。大規模なリフォームが必要になる前に住み替えを実行すれば、工事にともなう負担をなくせます。

バリアフリー化が必要になる前に、最初から高齢者向けの設備が整った物件を探すこともできます。

50代・60代は「具体的な行動に移すにはまだ早い」と感じるかもしれません。しかし、早めに検討を開始することで、いざという時の決断がスムーズになり、後悔のない住み替えを実現できます。

住まい選びのポイント



老後の住まいは、暮らしやすさだけでなく、安心感を左右する大切な基盤です。

年齢とともに変化する健康状態や生活環境にどれだけ柔軟に対応できるかが、後悔しない住み替えの鍵となります。

老後の住まい選びでは、次の3つの視点がとても重要です。

▼1.身体の変化への対応


将来の体調や体力の変化を見据えて、バリアフリー設計かどうかを確認することをおすすめします。手すりの有無や段差の少なさ、通路の広さは、転倒リスクの軽減にもつながります。

また、かかりつけ医や介護サービスが近くにあると、体調不良のときや介護が必要になったときも安心です。

▼2.経済的な持続可能性


年金や貯蓄を踏まえて、「毎月の住居費を無理なく払えるか」をシミュレーションしておくことが大切です。

家賃やローンのほか、光熱費や修繕費などのランニングコストも忘れずにチェックしましょう。とくに、一戸建ては修繕積立の計上を忘れがちですので、注意しましょう。

▼3.利便性と社会とのつながり


車を所有している場合は手放しても困らないように、駅やバス停が近いか、生活に必要なスーパーや病院などが徒歩圏内にあるか確認しましょう。日常生活の利便性は重要です。

新しい場所で孤立しないためにも、自治会活動や趣味のサークルなど、地域住民と交流できる場があるかも確認しておくとより安心です。社会とのつながりは、心の健康に影響します。

これらの要素を家族と共有し、優先順位を付けながら検討を進めることで、後悔のない住まい選びにつながります。

まとめ:後悔しない老後の住み替えは、早めの準備と自分らしい選択から

住み替えは、その後の暮らしの質を大きく左右します。リフォームや引っ越し、同居など、選択肢はさまざまですが、大切なのは「自分たちらしい暮らし方」を見つけることです。

50代・60代は心身が充実していますので、住まいを見直せる絶好のタイミングです。体力や判断力が衰える前に、ご自身やご家族の希望を整理しておくことをおすすめします。
後悔しない老後の住み替えは、早めの準備と自分らしい選択から
自分に合った住み替え先をじっくり検討したい」「でも、何から始めればいいかわからない」という方は、東急株式会社「住まいと暮らしのコンシェルジュ」をご活用ください。

建築や不動産の資格を持つコンシェルジュが中立的な立場から、住み替えやリフォーム、シニア住宅選び、資金計画などの幅広いご相談を承っております。お気軽にご利用ください。