歳を重ねるにつれて、「このまま今の家に住み続けられるだろうか」「将来、ひとりで生活するのが難しくなったらどうすればよいのか」と、不安を感じることが増えてくるかもしれません。
実は、高齢になると一般の賃貸住宅に新たに入居することが難しくなるケースがあります。そのため元気なうちから、シニアの住まいに関する選択肢を知っておくことが大切です。ご自身についてはもちろん、ご両親のためにもシニア施設について理解を深めてみませんか。
この記事では、高齢者向けの住まいの種類や費用、選び方のポイントまでわかりやすく解説します。
住まいについて漠然とした不安を感じている方も、具体的な検討を始めたい方も、ぜひ参考にしてください。
| 本稿の概要 |
|---|
| ⏵高齢になると一般の賃貸住宅に入居しにくくなるケースがある。早めに選択肢を知っておくことが備えの第一歩。 ⏵シニア向けの住まいにはサ高住・有料老人ホーム・グループホームなどさまざまな種類があり、身体状況や希望・費用によって向いている住まいが異なる。 ⏵住まい選びには資金計画や手続きも伴うため、信頼できる相談窓口を活用しながら計画的に進めることが大切。 |
高齢になると、賃貸住宅が借りられない?

「老後も今の家に住み続けたい」と思っても、戸建ての場合はバリアフリー化や安心して暮らすためのメンテナンスなどが欠かせません。
リフォーム工事の計画を夫婦、もしくは一人だけで進めるのは負担を感じたり、そもそもリフォーム費用がどれくらいかかるのか、不安になったりしますよね…。
「子どもも独立したことだし、もう少しコンパクトな賃貸に引っ越すのも良いかもしれない」「賃貸ならメンテナンス費用の負担も少ない」と考えて賃貸への住み替えを検討する方も多くいることでしょう。
また、現時点で賃貸暮らしの方の場合であっても、どこかのタイミングで賃貸→賃貸への引っ越しが必要になる可能性があります。
ところが実は、高齢になると一般の賃貸住宅へ新たに入居することが難しくなるかもしれないのです。
高齢者が一般賃貸に入居しにくい主な理由
一般の賃貸住宅では、大家や管理会社がシニア世代の入居を断るケースがあります。その背景には、いくつかの懸念があるためです。
- 孤独死や室内での事故が起きた場合のリスクへの不安
- 収入が年金のみであることによる家賃支払いへの不安
- 緊急時の連絡先・身元保証人が確保しにくいケース
- 認知症などによる契約維持への懸念
もちろんすべての物件・オーナーがそうではありません。しかしこうした状況があることを知っておくことで、「いざとなったら賃貸に住めば良い」と楽観視して後悔するのを防ぐことができます。
高齢者向けの住まいという選択肢
高齢者による賃貸への住み替えには、いくつかのハードルがあります。
「それでは戸建てに住み続けるしかないの?」「今のアパートから引っ越しが必要になったらどうすればいいの?」
そうした不安に応えるために用意されているのが、「高齢者が安心して暮らし続けられるよう設計された住まい」です。
シニア向け住まいはバリアフリー設備はもちろん、見守りサービスや生活相談、食事提供など、さまざまなサービスが備わっており、利用しやすくなっています。
「まだ元気だから関係ない」と思われるかもしれませんが、入居待ちが発生するケースもあるため、早めに情報を集めておくことが安心につながります。
高齢者向けの住まいにはどんな種類がある?

シニア向けの住まいは、大きく「公的施設」と「民間施設」に分かれます。
公的施設
いろいろな分類の方法がありますが公的施設として3種類ご紹介します。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 要介護3以上が対象。24時間介護が受けられる公的施設。費用が比較的抑えられる一方、入居待ちが長くなるケースが多い。 |
| 軽費老人ホーム(ケアハウス) | 低所得の方でも利用しやすい公的施設。自立〜要支援程度の方が対象で、食事や日常的なサポートを受けながら暮らせる。 |
| 公営住宅(高齢者向け) | 自治体が提供するバリアフリー仕様の賃貸住宅。家賃が低めに設定されているが、募集数が限られており抽選になることも多い。 |
これらは高齢者の「住まい」として捉えることができる施設で、長期居住が可能です。
公的施設は、国や自治体が運営・管理に関わるため、費用が民間に比べて抑えられているのが大きなメリットです。
ただし、入居希望者が多く年単位での入居待ちが生じやすいことや、入居条件には要介護認定が必要になるケースがほとんどのため、人によっては「住み替え先」としては、候補から外れるかもしれません。
民間施設
民間のシニア向け住宅として主に5種類ご紹介します。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 介護付き有料老人ホーム | 介護・看護スタッフが24時間365日常駐。介護度に応じた定額料金制で、手厚いケアを受けたい方に向いている。 |
| 住宅型有料老人ホーム | 食事・安否確認などの生活支援サービスあり。介護サービスは外部の事業所を利用し、必要な分だけ選べる。 |
| サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 賃貸借契約をベースにした住まい。安否確認・生活相談が基本サービスで、介護は外部サービスを組み合わせる。 |
| シニア向け分譲マンション | バリアフリー設計や緊急対応設備が整った分譲住宅。自立した生活を送りながら、必要に応じて外部サービスを利用する形が一般的。 |
| グループホーム(認知症対応) | 認知症の方を対象とした少人数制の共同生活の場。地域に根ざしたケアが受けられ、家庭的な環境が特徴。 |
民間の施設は要介護認定がなくても入居できるところもあり、多様なサービスを受けられる点がメリットといえます。自分の暮らし方や予算に合わせた選択ができるのも、大きな魅力です。
ただし費用は公的施設よりも高額になります。
ここからは、民間施設それぞれの特徴について見ていきましょう。
▼民間施設1. 有料老人ホーム(介護付き・住宅型)
介護付き有料老人ホームは、ホーム内に介護・看護スタッフが24時間365日常駐しており、日常的な介護サービスを施設内で受けられます。
介護度に応じた定額料金制のため、多くの介護サービスを必要とする方にとってはわかりやすい費用体系です。
住宅型有料老人ホームは、食事や安否確認などの基本的な生活支援サービスは施設側が提供しますが、介護サービスが必要な場合は外部の介護保険事業所を利用する形になります。
介護度がまだ低い方や、必要なサービスだけを選んで利用したい方に向いています。
いずれも要支援・要介護認定を受けている事が入居の条件になる施設が多いです。
▼民間施設2. サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、賃貸借契約をベースにした住まいです。
ケアの専門家が日中建物に常駐し、最低限の安否確認と生活相談サービスを提供します。介護サービスが必要な場合は、外部の訪問介護や訪問看護などを利用する仕組みです。
有料老人ホームに比べると費用が抑えられるケースが多く、できるだけ自立した生活を維持したい方に選ばれています。
▼民間施設3. シニア向け分譲マンション
シニア向け分譲マンションは、購入して住む形が基本です。バリアフリー設計や緊急対応設備、娯楽設備が整っており、簡単にいえば現代の一般的なマンションにプラスアルファとして、高齢者向けの設備が備えられた住まいとなります。
基本的には自立者向けのため、手厚い看護サービスなどは建物内では提供されていません。
▼民間施設4. グループホーム(認知症対応)
認知症の診断を受けた方を対象とした、少人数制(5〜9人程度)の共同生活の場です。スタッフのサポートを受けながら、入居者が家事などを分担して生活します。
入居には要介護認定(要支援2以上)と認知症の診断が必要です。
自分に合った住まいを選ぶ3つのポイント

住まいの種類がわかったところで、次は「どの住まいが自分(または家族)に合っているのか」を考えてみましょう。住まい選びで特に意識したい3つの観点を紹介します。
① 身体の状態・介護の必要性で考える
シニアの住まい選択で重視するべきポイントは、現在の身体状況と介護の必要度です。
自立して日常生活を送れる方であれば、サ高住やシニア向け分譲マンションなど、自分のペースで暮らせる住まいが選択肢に入ります。
一方、要支援・要介護の認定を受けている方や、今後介護が必要になる可能性が高い方は、介護サービスが充実した有料老人ホームやケアハウスが現実的な選択肢になります。
② どんな暮らし方を望むかで考える
身体の状態とあわせて大切なのが、「どんな暮らしを送りたいか」という希望です。
ある程度、自立して生活できている場合は、以下が選択肢となります。
- 公的施設:軽費老人ホーム(ケアハウス)・高齢者向け公営住宅
- 民間施設:住宅型有料老人ホーム・サ高住・シニア向け分譲マンション
どのように暮らすことが自分や家族にとって安心なのかを明らかにした上で、選択肢を絞ってみてください。
③ 月々の費用・予算で考える
住まいの選択において、費用は大切な判断材料のひとつです。年金収入や貯蓄額、今後の医療・介護費の見通しを踏まえて、無理なく支払い続けられる月額の上限を確認しておきましょう。
初期費用が高い施設でも月額が抑えられるケース、逆に初期費用が低くても月額が高めになるケースもあるため、長期的な合計支出で比較することが大切です。
また、介護度が上がった場合に費用がどう変わるかも、事前に確認しておくと安心です。
住まい探しの前に整えておきたいこと

住まいの種類や選び方のポイントを知ったところで、実際に動き出す前に整えておきたいことがあります。
ここでは、シニアの住まい探しの前に押さえておくべき内容を見ていきましょう。
資金計画の確認
まずは、どのくらいの費用なら新しい住まいでの暮らしを無理なく続けられるか、把握することが大切です。
貯蓄の残高を確認し、今後の年金収入額やその他の収入、それに加えて今後の医療費や介護費用の見通しを整理した上で、月々の住居費としてどの程度出せるかを確認しましょう。施設を変える場合のコストなども視野に入れておくと、より現実的な計画が立てられます。
加えて、ご自身の状況によっては、介護保険や自治体の住み替えに関する助成制度などの補助金が使えることもあります。住み替えを検討中の方は、自治体の高齢者福祉担当窓口に問い合わせてみると良いでしょう。
今の住まいをどうするか
住み替えを検討する場合、今の住まいをどうするかも検討しておきたいポイントです。
- 持ち家の場合:売却・賃貸に出す・家族に引き継ぐなど、複数の選択肢を比較する
- 賃貸の場合:退去のタイミングや手続きの流れを確認しておく
家族に引き継ぐ場合は、生前贈与か相続かによって手続きや税負担が異なります。いずれの方法も、税理士や司法書士などの専門家に早めに相談しておくと安心です。
賃貸住まいの場合は、施設への住み替えにあたって退去手続きが必要になります。賃貸契約には一般的に1〜2か月前の解約通知が必要なため、施設への入居タイミングと退去日のスケジュール調整が大切です。仮住まいが必要になるケースもあるため、住み替え先の入居可能日を確認した上で、逆算して退去時期を決めるとスムーズに進められます。
相談窓口の活用が近道に

高齢者の住まいは種類が多く、費用や条件も施設によって大きく異なるため、ひとりで情報を集めて比較・検討するのは、思いのほか時間と手間がかかります。
「自分たちだけで決めるのは難しい」「誰かと一緒に相談しながら今後の住まい先を決めたい」という方は、専門の窓口への相談も選択肢に入れてみてください。
東急株式会社の「住まいと暮らしのコンシェルジュ」では、高齢者の住まいに関するご相談をはじめ、資金計画のご確認やご自宅のご売却や賃貸に出す場合の家賃査定、不用品処分やお引越しについてもご相談いただけます。
「どこに相談すればいいかわからない」という段階からでも、お気軽にご相談ください。今後の日々をより安心して過ごすために、プロと一緒に最適な住まいを探していきましょう。
まとめ
高齢者向けの住まいには、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)・介護付き有料老人ホーム・住宅型有料老人ホーム・グループホーム・特養など、さまざまな種類があります。
どれが合っているかは、身体状況・希望する暮らし方・費用のバランスによって変わるもの。「まだ早い」と思っている今のうちから情報を集め、選択肢を知っておくことで、いざ住まいを変える必要に迫られた際も暮らしの変化をスムーズに受け止められるでしょう。
費用や手続き、資金計画まで含めて検討することが多いテーマだからこそ、専門家や信頼できる相談窓口を上手に活用しながら、計画を進めてみてください。


