相続登記の義務化いつから?罰則ある?過去の相続も対象?

相続登記の義務化いつから?罰則ある?過去の相続も対象?

所有者不明の不動産が増えています。登記簿を見ても、所有者がお亡くなりになっていたり記載の住所に住んでいなかったりして、現所有者やその所在が分からないのです。

所有者不明の不動産は、さまざまな問題を引き起こしています。そこで、相続登記の義務化が令和6年4月1日から、住所移転登記の義務化が令和8年4月末までに始まることになりました。

今回の法改正で、相続登記や住所移転登記に具体的な期限が定められます。遅れた場合はペナルティーの適用対象となりますので、手続をしないと困ることになるでしょう。

本稿では、相続登記の義務化の概要をご紹介します。過去の相続にも適用されますので、相続登記をせずに放置されている方もご注意ください。

相続登記義務化の概要

2021年2月に「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案」が決定されました。この改正によって、相続登記や住所移転登記が義務化されることになりました。

参考:法務省「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案」

さっそく、相続登記義務化の概要をご紹介します。

相続登記とは



不動産の所有者の名義を変更するとき、法務局で「所有権移転登記」をおこないます。この名義変更は「相続、贈与、売買」など、さまざまな事由で発生します。

このうち「相続」により亡くなった方から相続人に名義変更することを「相続登記」と呼びます。手続については、以下のサイトをご覧ください。

参考:法務省「あなたと家族をつなぐ相続登記 ~相続登記・遺産分割を進めましょう~」

一般的に、登記は司法書士に依頼する方が多いですが、ご自身で手続することも可能です。相続登記も、ご自身で申請できます。

ただし、相続登記は準備や手続が非常に複雑になる場合があります。そのようなケースでは、集める書類が膨大になりますので、司法書士に任せた方がいいでしょう。

開始日はいつから?



令和3年4月21日に、民法や不動産登記法等の一部を改正する法律が成立しました。この改正で相続登記が義務化され、令和6年(2024年)4月1日からスタートします。

スタートしたあとは「相続の開始および所有権を取得したと知った日から3年以内」に登記を済ませなくてはなりません。

参考:民法等の一部を改正する法律

過去の相続不動産も対象?



相続登記義務化の対象者は、不動産を取得した相続人です。施行日(令和6年4月1日)前に相続が発生していた方も、相続登記の義務が課されます。

法令には、制定前の事実にまでさかのぼって適用しないとする原則があります。よって、改正の効力がおよぶのは施行後の出来事であって、施行前の出来事については改正法の適用対象外となります。

しかし、以下は改正前の事案でもさかのぼって適用されることになっているのです。

  • 相続登記の義務化
  • 住所等の変更登記の義務化


ただし、どちらも猶予期間があります。

相続登記は「施行日」または「相続による所有権の取得を知った日」のいずれか遅い日から3年間の猶予期間が与えられます (改正不動産登記法 附則第5条第6項)。

住所変更登記は、施行日から2年間の猶予期間が与えられます (改正不動産登記法 附則第5条第7項)。

期限はいつまで?



改正後の相続登記の期限は、自己のために相続開始があったことを知り、かつ不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内です (改正不動産登記法 第76条の2)。

遺産分割協議等が難航して期限に間に合わないときは「相続人申告登記」の申請をおこなうことで義務を履行したことにできます (詳しくは後述)。

なお、相続だけでなく、遺贈(遺言によって財産を他人に贈与すること)を原因とする所有権移転登記申請も同様です。

罰則はある?



正当な理由がないのに、不動産の相続を知ってから3年以内に相続登記の申請をしなかった場合、10万円以下の過料(金銭の納付を命じる罰則)の適用対象となります (改正不動産登記法 第164条)。

過料適用の際は、あらかじめ登記官が履行期間を経過した相続人に対して催告(登記の請求)をおこないます。それでも正当な理由なく登記をしなかった場合に、過料が適用されます。

ちなみに「正当な理由」については、今後、内容を明確にしていく予定です。想定される例を、ご紹介しておきましょう。

  • 関係者が多くて必要な資料を集めるのが難しいケース
  • 遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース
  • 申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース


参考:相続登記の申請の義務化と過料について

相続登記義務化の注意点

つづいて、相続登記義務化に関する注意点をご紹介します。

遺産分割の協議が難航した場合も登記が必要



相続人のあいだで遺産分割の協議が完了した場合は、その結果をふまえた登記をおこないます。では、協議が難航して期限を迎えそうな場合はどうすればいいのでしょうか。

その場合は「相続人申告登記」の手続を取ることで義務を履行したことにできます (改正不動産登記法 第76条の3)。

相続人申告登記は今回新たに作られた登記で、令和6年4月1日から開始されます。相続人が登記名義人の法定相続人であることを申し出て、登記官がその方の氏名や住所などを職権(地位にもとづき実施できる権限)で登記します。

その他にも、相続人申告登記には以下の特徴があります。

  • 持分は登記されない
  • 単独で申告できる
  • 添付書面が簡略化されている
  • 非課税


相続人申告登記をおこなったあと、遺産分割の話し合いが決着したときは「遺産分割の日から3年以内」に相続登記の申請をすることが義務づけられています。

なお、相続開始から10年たった遺産分割は、個別案件ごとに調整をおこなう「具体的相続分」ではなく、原則的に「法定相続分」を基準とするように改められました (改正民法 第904条の3)。

所有者の住所等が変わった場合も登記が必要



従来は住所変更登記も義務ではなく、所有者が転居していても放置されがちでした。とりわけ人口の流動性が高い都市部では住所変更登記を完了していない方が多く、所有者不明土地が発生する原因になっています。

今回の改正では、登記簿上の所有者の住所等が変わった場合、その申請登記が義務化されます (令和8年4月末までに開始予定)。期限は、住所等の変更日から2年以内です (改正不動産登記法 第76条の5)。

住所等の変更登記についても、正当な理由のない申請漏れは、5万円以下の過料の適用対象になります (改正不動産登記法 第164条第2項)。

登記内容が事実と違う場合、登記官は職権で変更登記できる



登記官が他の公的機関から名義人の死亡や転居などの情報を取得した場合、登記官は職権で登記簿に表示できるようになります (改正不動産登記法 第76条の4)。

ただし、個人情報保護の観点から、登記官は名義人に住所等の変更の了解(「申出」と扱う)を取ったうえで変更の登記をおこなうことになっています。

不動産の相続で悩んだら東急株式会社「住まいと暮らしのコンシェルジュ」へ

相続不動産を売却する際は、現在の所有者を明確にしておく必要があります。所有者があいまいな不動産は、買いたいと思う人がおらず取引ができません。不動産仲介会社の信頼を得ることも難しいでしょう。

売却せず所有し続ける方も、相続登記は期限内に終わらせましょう。登記せずに放置すると、過料の適用対象となってしまうかもしれません。なにより、時間とともに登記の手間が増えてしまうことになります。

東急株式会社「住まいと暮らしのコンシェルジュ」では、不動産の相続に関するご相談もお伺いしております。無料でご相談いただけますので、ぜひコンシェルジュをご活用ください。

関連するコラム

【事例紹介】相続した不動産(ビル)を上手に活用するには

【事例紹介】相続した不動産(ビル)を上手に活用するには

東急線エリアから離れた場所にお住まいのお客様よりご相談をいただきました。相続した世田谷区内の不動産(ビル)を利活用したいけれど、何処へ相談すればよいのか分からず、世田谷区役所のHPをご覧になったそうです。そこから「東京都 空き家情報サイト」を経て、当サービスの情報を目にし、ご連絡をいただきました。

不動産の「利活用について検討」と言っても、どんなご要望があるかはお客様それぞれ千差万別です。
今後お使いになるご予定などをお伺いすると、今すぐに売却はしないが、3~5年後くらいには売却したいとのこと。収益はそこまで期待しないので今回利活用するための費用は極力控えた方策を検討したいとのご要望でした。

相続した不動産について
・遺産分割手続きや相続登記は終わっており、土地・建物はお客様(ご相談者)の単独名義になっている
・ビルは全フロア空室
・建築されたのは昭和40年代(旧耐震基準・耐震補強工事は行っていない)

お客様は旧耐震基準の構造である事を心配されておりましたが、幅広くプランを提示してほしいとのご希望をいただき、下記選択肢をコンシェルジュの提携パートナー会社とともに検討しご提案いたしました。

① 個人、事業者へ賃貸
当サービス提携パートナー会社を3社紹介したところ、スケルトンでの賃貸の提案がありました。実際に募集をかけたところ、コインランドリー、トランクルーム等を運営する事業者からの問い合わせがあり、数件見学希望も入りましたが、やはり旧耐震基準の構造であることがネックになり、残念ながら条件が合わずに見送る結果となりました。
因みに、耐震補強工事の費用について、試算したところ、耐震診断・耐震補強の設計料で400~500万円位、さらに高額の耐震補強工事の費用がかかり、費用を抑えたいとのご要望から外れてしまうため、見送ることになりました。

② 医療ビルへ建替え
当初より費用は控えたいと伺っておりましたので、現実的ではありませんが、同時期に近隣で医療ビルへの建替え相談もありましたので、活用の可能性を探る参考情報としてご提示いたしました。やはりご希望と合致せず、見送ることになりました。

③ ご売却
利活用ではありませんが、新たな選択肢としてご提案いたしました。
当サービス提携パートナー会社3社をご紹介し、売却査定について、コンシェルジュも同席しお客様へご提案いたしました。お客様が想定されていた価格を大きく上回っていたこともあり、今回は当該物件を売却することに決定されました。
また、当該不動産の場合は譲渡益が見込まれます。今回はご利用されませんでしたが、譲渡益や相続についての税金にご不安がある場合は提携の税理士による税務相談会をご利用いただけます。

今回のご相談では、賃貸については旧耐震基準の構造という部分で、賃料がご希望よりも随分と抑えられてしまう点や、耐震補強工事をするにも高額な費用がかかってしまう点がお客様のご要望に合致せず選択肢が絞られました。当初は利活用し、数年後に売却される予定でしたが、結果的には売却時期を前倒すという新たな選択肢を選ばれまました。

担当させていただいたコンシェルジュの立場からですが、お客様のご要望にできるだけ寄り添い、また、よりよいご提案の可能性を求めていきたいと思っております。中には当初ご依頼いただいていない事も、お客様とご相談しご了解をいただいたうえでご提案させていただく場合がございます。

当サービスでは、提携パートナー会社への連絡の取りまとめ、お打合せの日程調整なども行いますので、ご自身で全て手配されるよりも、スムーズにストレス少なく進めることが出来ると思います。不動産の利活用でお悩みの際には、是非、ご利用ください。

2020/06/29

貸す

2020/06/29

関連するコラム

【実例紹介】相続した実家は売却、住替え、それとも建替え?

【実例紹介】相続した実家は売却、住替え、それとも建替え?

大田区にお住まいの60代のS様。二世帯同居していたお父様が亡くなりご相続を受けた住まいをどうしたらいいか、とコンシェルジュにご相談をいただきました。
元々二世帯住宅でしたから、夫婦だけで住むには広すぎます。「売却して小振りなマンションに住替えようか」と考えつつも、どのように進めるべきかお悩みでした。
実際のご検討の流れについてご紹介いたします。

まずはコンシェルジュより現在の状況についてお伺いします。
当初、大きな家の管理も大変ということで住替えのご意向が強かったのですが、長年住み慣れた住まいを売却してよいものか…というお気持ちもあり、方向性に関してまだ迷うところがおありでした。

そこで30代のお子様世帯も交えた家族会議を開いた結果、建替えて二世帯同居という案が浮上しました。
住替えか、建替えかという検討になったため、それぞれのケースで具体的に検証が始まります。

住替え、建替えどちらがよいか、各ケースを検証するために、不動産仲介会社1社、ハウスメーカー2社をコンシェルジュからご紹介し、以下のような資料を各社にてご用意いただきました。

・住替え:売却査定、住替え先の候補物件
・建替え:建築プラン(住居、賃貸併用住宅)、建築費用、収支計画

★Point:ご自宅の敷地が広く立地条件もよかったため、建替えについては賃貸併用住宅も選択肢に加えました。

まずは方針を決める段階であったため、コンシェルジュが各社からの情報を取り纏め、お客様へそれぞれの方針について要点をご説明しました。
住替えについては、売却査定で高めの金額が見込め、そして住替え先候補にも良さそうな物件がでていました。それなら住替えて・・・とご家族間で様々なご意見を交わされましたが、長年親しんだ住環境を手放したくないという想いが徐々に強くなり、改めて建替えプランについて深堀していくこととなりました。

★Point:各社との面談タイミングについては、一般的には資料が揃った段階で各社から直接ご説明をお聞き頂くことを推奨しておりますが、お客様のご意向に合わせ調整いたします。

建築プランを検討したなかで、当初は想定していなかった賃貸併用住宅もみていたところ、二世帯住宅の確保のほか、併用する賃貸部分の収支内容もよくなっていたこともあり、ここから建替えへのお気持ちがご家族内で強くなっていきました。結果として、賃貸併用二世帯住宅の方針に定まることとなり、今度は賃貸提案を得意とする建築会社を更に加えて比較検討していく運びとなりました。

★Point:検討状況やお客様のご希望に合わせ、相談先を増やすことも可能です。

S様は、賃貸住宅は初めてのことで不安も多くあったのですが、将来に渡ってのシミュレーションを何度も検証したことで、最終的にはご安心いただき賃貸併用二世帯住宅への建替えを進める結果となりました。
最初にご相談をいただいてからご契約まで4か月ほどかかりましたが、お子様世帯を含めご家族でのご相談も深まり、皆様納得のいくご判断ができたと仰っていただきました。

このように、ご検討が進むなかで、お客様が想定していなかった結果になることもよくあります。
住まいと暮らしのコンシェルジュでは様々なご相談に応じ皆様をサポートいたします。
将来の方針を検討するところから、ぜひお気軽にご相談ください。

2021/05/10