実家を売却するべき?判断ポイントや適切な時期など進め方を解説

実家を売却するべき?判断ポイントや適切な時期など進め方を解説

親が高齢になってくると、「実家をこの先どうすればいいのだろう」と考える場面が増えてきます。

今は元気でも、いずれ住む人がいなくなったら家はどうなるのか。売るべきか、残すべきか。

売るとなった場合、税金や手続き、兄弟姉妹との話し合いなど考えなくてはならないことが生じます。時間や手間を考えるとなかなか動き出せずにいる方も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、実家を売却するかどうかの判断ポイントから、適した時期や売却方法、必要な費用・税金、活用できる特例、そして後悔しないためのコツまでをわかりやすく解説します。

実家の売却を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

本稿の概要
⏵実家を売却するべきかどうかは、住んでいる人の有無や家の状態による。状態によっては放置するほどリスクや費用が膨らむため、早めの検討が大切。
⏵売却を行う場合、相続前・相続後で使える特例やトラブルの起こりやすさが変わる。親が元気なうちに方向性を共有し、家族信託なども選択肢に入れておくと安心。
⏵費用や税金は特例の活用で大きく抑えられる可能性がある。後悔しないための準備を踏まえ、信頼できる相談先を見つけることがポイント。

「実家を売却するべきかどうか?」の判断ポイント

実家を売るかどうかは、なんとなくの気持ちだけで決められるものではありません。

まずは、売却を検討したほうがよい代表的な3つのサインを確認しておきましょう。当てはまる項目が多いほど、早めに方向性を考えておくことをおすすめします。

実家に誰も住んでいない


すでに誰も住んでいない、あるいは高齢者施設への入居や、二世帯住宅への引っ越しを計画している場合も、売却を検討してみる時期です。

誰も住んでいない家をいつまでも残しておくことは、固定資産税や維持費など、直接的な費用負担にもつながります

また、誰も住んでいない家はどんどん荒れていくもの。他人が住み着いたり、溜まり場になってしまったりと治安面でも空き家は不安が残るため、なるべく早く動き出したほうがよいでしょう。

定期的な管理が負担となっている


実家から遠方に住んでいて頻繁に通えない、仕事や子育てで時間が取りにくいといった事情があると、換気や掃除、庭木の手入れが後回しになりがちです。

管理が行き届かない状態が続くと、建物の傷みやご近所トラブルにもつながります

「維持し続けること自体がつらい」と感じ始めているなら、それは売却を含めて今後を考えるタイミングと言えるでしょう。

老朽化が進んでいる


建物の老朽化が進んでいる場合も、早めの判断が大切です。

家は時間の経過とともに資産価値が下がっていく傾向があります。とくに築年数の古い住宅は、年を追うごとに買い手がつきにくくなり、売却価格も下がっていきやすいものです。

「もう少し様子を見てから」と先延ばしにしている間に、売れたはずの家が売りづらくなってしまうこともあるため、建物の状態が気になり始めたら、現状の価値を一度確認しておくと安心です。

実家の売却に適した時期・タイミング

実家の売却を考える時期は、大きく分けると「相続前に売るか、相続後に売るか」のどちらか、更に相続前に子に名義変更した場合も加え、3パターンが存在します。

どれもタイミングにもメリットとデメリットがあり、使える特例やトラブルの起こりやすさも変わります。

親本人 or 子が代理人として売却する生前贈与で子が売却する相続後に売却する(死後)
売主親本人子(生前贈与などで名義変更後)子(相続後)
メリット・親の意思で決められる
・兄弟間でもめにくい
・居住用財産の3,000万円控除など使える制度がある
・子がフットワーク軽く動ける
・親の意思も確認できる
・親が最後まで住み慣れた家で過ごせる
・空き家特例など使える制度がある(施設入所などで空き家になった場合も適用できるケースあり)
デメリット・親の住まいの確保が必要
・相続税が増える場合がある
・贈与税・名義変更費用が発生する場合あり
・空き家特例などの特例を使用できない
相続・名義変更・遺品整理が一度に重なりやすい
向いているケース・親が「元気なうちに整理したい」と考えている
・親がすでに施設などに移っている
・親が「子に引き継ぎを済ませたい」と考えている
・相続人が一人か、分け方が決まっている
・特例を活用して税負担を抑えたい
・生前は売却の話を進めにくい

「自分たちのケースではどのタイミングが合っているのか」と迷う場合は、早めに専門家へ相談しておくことをおすすめします。

東急株式会社の「住まいと暮らしのコンシェルジュ」では、売却のタイミングや方向性の整理からご相談を承っています。

実家の主な売却方法

売却の方向性が見えてきたら、次は「どう売るか」を考えていきましょう。

実家の売却にはいくつかの方法があり、家の状態や急ぎ具合によって向き不向きが変わります。

まずは親が売るのか、子が売るのかを考える


最初に整理しておきたいのが、「売主が親なのか、子なのか」という点です。

親が売主となる場合でも、実際のやり取りを親本人が行うのか、子が代わりに進めるのかで手続きが変わります。名義は親のまま、交渉や手続きを子が代行する場合には、委任状が必要になります。

「委任状の準備も難しいほど、親の状態が悪い...」という場合は「成年後見制度」を活用することで、売却手続きが可能です。ただしこの制度は売却の自由度が低く、手続きには期間も費用も必要です。

そのため最近では親の判断能力のあるうちに、あらかじめ「家族信託」という制度を結ぶ方法が、注目されています。
項目成年後見制度家族信託
開始タイミング判断能力が低下した後でも利用できる親の判断能力があるうちに契約する必要がある
財産管理を行う人家庭裁判所が選任(家族以外が選ばれることもある)親が信頼する家族を自分で指定できる
自由度本人保護が目的のため、財産の処分には制限がある契約内容に沿って柔軟な管理・売却が可能
実家の売却居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要あらかじめ定めた範囲で家族の判断により売却できる
向いているケースすでに判断能力が低下している場合の備え元気なうちから将来に備えておきたい場合

家族信託は親の判断能力が低下した時点で効果を発揮する制度であり、成年後見制度より柔軟な対応が可能です。

実家の売却を視野に入れるなら、親が元気なうちに家族信託を結んでおくことも、検討しておくと安心です。

成年後見制度と家族信託については、以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

不動産会社など仲介業者に入ってもらい売却を行う


親・子のどちらが売主の場合でも、最も一般的なのが、不動産会社に仲介に入ってもらう方法です。

不動産会社が買い手を探し、価格交渉や契約手続きをサポートしてくれます。市場で広く買い手を募れるため、相場に近い価格での売却が期待しやすいのが特徴です。

不動産会社に直接売却する


早く現金化したい場合や、買い手がつきにくい場合は不動産会社に直接買い取ってもらう方法もあります。

仲介に比べて売却価格は下がる傾向がありますが、買い手を探す時間や手間を省けます。

更地にして売却する場合の注意点

建物を解体し、土地として売却する方法もあります。

更地にすることで土地の活用方法が広がること、さらに、買い手側の解体費用が不要になることから、古い建物がある状態よりも買い手がつきやすくなります

一方で、売主側には解体費用が発生してしまうこと、さらに、建物がない状態で1月1日を迎えると土地にかかる固定資産税・都市計画税の優遇がなくなり税額が高くなる点には注意が必要です。

【どの売却方法でも把握しておこう】相続人が複数人いる場合の考え方

どの売却方法を選ぶにしても、相続人が複数いる場合は特に注意が必要です。

実家は相続財産の一部であり、相続人が複数いる場合は、原則として全員の合意がなければ売却を進められません。一人でも反対する人がいると、手続きはストップしてしまいます。

複数人の意見をまとめるのは簡単ではありませんが、実家問題を放置すればするほど建物の劣化や費用負担といったリスクは積み重なっていきます。

まずは「全員の合意が必要」という前提を共有したうえで、早めに話し合いを始めることが大切です。

実家を売却する際の流れ

ここからは、実家を売却する際の一般的な流れを確認していきましょう。全体像をつかんでおくことで、何をいつ準備すればよいかが見えてきます。

1.査定依頼と売却前の準備(名義変更・書類整理)


実家を売ることが決まったら、不動産会社に相談し建物の査定を依頼します。一社だけでなく、複数の不動産会社で査定をし、価格や条件などを比較検討することがポイントです。

また、査定の結果を待つ間、遺言書の確認や家財の整理、売却に必要な書類の収集や手続きの準備も進めておきましょう。

一人でこれらすべてを整えるのは非常に大変なため、専門家に相談しながら進めていく方法がおすすめです。

東急株式会社の「住まいと暮らしのコンシェルジュ」では「何から準備すればいいのか分からない」「売るべきかどうかも決めかねている」という段階から、ご相談を承っています。

ご実家をどうするのか悩んでいる方や、売却を検討している方は、ぜひお気軽にご活用ください。

2.不動産会社の選定


査定結果が出たら、査定結果や担当者の対応を比較し、依頼する不動産会社を選びます。

査定額の高さだけでなく、担当者の対応力や実績なども選定時に重視したい点です。

3.売却活動


不動産会社と契約を結んだら、広告やインターネット掲載などで買い手を募ります。問い合わせの内容や反応を見ながら、必要に応じて価格や売り出し方を調整していきましょう。

購入希望者が現れたら、内見対応を進めます。

4.売買契約の締結


買い手が決まったら、価格や引き渡し時期、付帯設備などの条件を確認し、売買契約を結びます。契約時には物件価格の5%〜10%前後の手付金を受け取るのが一般的です。

契約内容は後のトラブルを防ぐ大切な取り決めになるため、不明な点は署名前に必ず確認しておきましょう。

5.決済と物件の引き渡し


売買契約のあと、残代金の受け取りと所有権の移転(登記)を行い、物件を買い手に引き渡します。

このタイミングで、鍵の引き渡しや公共料金の精算なども済ませます。住宅ローンが残っている場合は、決済時に完済して抵当権を抹消する手続きが必要です。

6.確定申告


実家を売却して利益が出た場合は、売却した翌年の確定申告期間に申告と納税が必要です。

特例を使って税額が0円になる場合でも、その特例を受けるために申告が必要なケースがあるため、「支払う税金はないから確定申告はなしでいい」と勘違いしないように、注意しましょう。

実家の売却時に必要な費用・税金

実家を売却する際には、さまざまな費用や税金が発生します。あらかじめ把握しておくことで、手元に残る金額の見通しを立てやすくなります。

相続税・譲渡所得税


実家を相続した場合は相続税が、売却して利益が出た場合は譲渡所得税が発生する可能性があります。

どちらも物件の評価額や所有期間、相続人の人数などによって金額が大きく変わります。また、後述する特例を活用できるかどうかによっても、最終的な税負担は異なります。

税額の計算は複雑なため、まずは税理士への相談をおすすめします。

仲介手数料や解体費などの諸費用


税金以外にも、売却にともなってさまざまな費用が発生します。代表的なものを整理しました。
費用の種類内容費用の目安
仲介手数料不動産会社に仲介を依頼した場合に支払う費用売却価格×3%+6万円+消費税(売却価格400万円超の場合の上限額)
印紙税売買契約書に貼付する印紙の費用1,000円〜6万円程度(売却価格による)
登記費用名義変更(相続登記)や抵当権抹消などにかかる費用。司法書士への報酬を含む数万円〜10万円程度(登録免許税+司法書士報酬)
解体費更地にして売却する場合にかかる建物の解体費用100万円〜300万円程度(木造30坪前後の戸建ての目安)
測量費土地の境界を確定するための測量にかかる費用数十万円〜100万円程度(隣地・道路との状況による)
家財処分費残された家具や荷物の整理・処分にかかる費用数万円〜数十万円程度(家財の量による)

※上記はあくまで一般的な目安です。物件の規模や立地、依頼先によって金額は大きく変わります。

これらの費用は物件の状態や売却方法によって大きく変わります。「想定より手元に残らなかった」とならないよう、早い段階で全体の費用感をつかんでおくことが大切です。

実家の売却で活用できる主な特例

実家の売却の際、条件を満たすことで税負担を大きく抑えられる特例があります。

代表的なものとして、以下のような制度があります。


いずれも適用条件が細かく、年度によって内容が変わるものもあります。専門的な知識も必要になるため、特例を活用した上で賢く親の家を売却したい場合は、専門家への相談がおすすめです。

そもそも実家が売れない場合は?

「実家を売ろうと思っても、なかなか買い手がつかない」というケースもあります。ここでは、売れない主な理由と、その場合の対策を見ていきましょう。

売れない主な理由


実家が売れにくい背景には、いくつかの典型的な理由があります。
  • 土地のリスクがある
  • 傾いた擁壁・セットバックが必要・再建築不可物件など
  • 築年数が古く修繕が必要
  • 「事故物件」扱いになってしまっている(実家で親が亡くなった場合など)

擁壁が傾いている、再建築のためにセットバック(道路後退)が必要、そもそも再建築できない物件など、土地の条件が買い手のハードルになることがあります。

また、築年数が古く大きな修繕が必要な家や、室内の状態が良くない家も敬遠されがちです。さらに実家で親が亡くなった経緯などから「事故物件」として扱われてしまうと、買い手がさらに限られてしまいます。

実家が売れない場合の対策方法


実家が売れない場合、その理由によって対策はさまざまです。物件の状態や土地の条件によっては、通常の売却以外の方法が合っているケースもあります。

いずれにしても、一人で抱え込まず、まず東急株式会社の「住まいと暮らしのコンシェルジュ」にご相談ください。仲介・買取どちらにも対応できる不動産会社のご紹介や、税金面の専門家との連携サポートも承っています。

また、空き家になった実家の活用や対策については、以下の記事でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

実家の売却で後悔しないためのポイント

実家の売却は、金額も大きく、家族の感情も絡む大切な決断です。後悔しないために、押さえておきたいポイントを整理していきましょう。

相続人全員の同意を得る


相続人が複数いる場合、実家の売却には全員の同意が必要です。一人でも反対する人がいると、手続きは進められません。

そのため、誰が売却を主導するのか、売却代金をどう分けるのかといった点は、早い段階で全員の認識をそろえておくことが大切です。

口頭の約束だけでは後から食い違いが生じやすいため、合意した内容は書面に残しておくと、より安心です。

境界線問題をクリアしておく


実家の土地を売却する際は、原則として土地の境界を明らかにする必要があります。

基本的には境界は「確定測量図」に記載されています。確定測量図は住宅の購入時に受け取る書類の一部として、含まれていることがあります。

ただし測量から長い年月が経っている場合は、地盤の変化などで現況と数値がずれていることがあり、改めて測量が必要となるケースもあるため注意しましょう。

売る前に片付けを済ませておく


家財や荷物が残ったままだと、内見時の印象が悪くなり、売却価格にも影響しかねません。

実家の片付けは思い出の整理でもあり、時間と気持ちのエネルギーが必要な作業です。売却を決めたら、早めに少しずつ進めておくことで、いざというときに慌てずに済みます。

税金・制度についてしっかり把握しておく


特例を使えるかどうかで、手元に残る金額は大きく変わります。

「知らなかったために使えるはずの特例を逃した」とならないよう、早い段階で税理士や不動産会社に相談し、自分たちのケースで使える制度を確認しておきましょう。

実家の売却に「辛い」「寂しい」と感じるときは

実家は家族の歴史や思い出が詰まっている場所。それを手放す以上、「辛い」「寂しい」という気持ちがわいてくるのは、ごく自然なことです。

無理に気持ちを切り替えようとせず、写真に残す、思い出の品を一つだけ手元に残す、家族で最後にゆっくり過ごす時間をつくるなど、自分たちなりの区切りのつけ方を大切にしてください。

現実的な手続きの部分は専門家や相談窓口に任せ、ご家族は気持ちの整理に時間を使う、そうした役割分担も後悔の少ない選択につながります。

まとめ

実家の売却は、いつかは向き合わなければならないテーマです。しかしいざ直面すると「何から始めればいいのか分からない」「まだ早いのでは」と迷ってしまいますよね。

大切なのは、家族で早めに方向性を話し合っておくことです。そのうえで、売却の時期や方法、使える特例を踏まえて準備を進めることで、納得のいく結論に近づけます。

東急株式会社の「住まいと暮らしのコンシェルジュ」では、不動産の売却はもちろん、家族信託や空き家管理など、住まいに関するさまざまなお悩みをワンストップで受け付けています。
中立的な立場で、ご要望に合いそうな不動産会社のご紹介も可能です。

「どこから始めればいいのか」という段階からでも構いません。実家という大切な場所だからこそ、現実的な問題と気持ちの両面に配慮しながら、ご家族が納得できる形を一緒に見つけていきましょう。